このプロジェクトの課題は採光と通風の確保方法であった。北がわ道路であるため、都市建築の通例だが、南側の高層マンションをはじめ3方閉ざされた閉塞的環境であった。おまけに敷地は道路よりいきなり1層分下がっていた。コンペ時は、周囲の視線の遮断と通風を意識して、スリットウォールを外周にまわし、そこを緑化するという提案だった。その中に入れ子状に部屋を配置し前後に空間を取るというものである。完成形はその部屋が北側により、南のスリットウォールはもうそう竹に取って代わったが、当初のイメージを損なわず、不思議な空気をかもし出す建築として都市に溶け込んでいる。