敷地は神戸市郊外の閑静な住宅地で、整然と区画整理された宅地に戸建住宅が建ち並ぶ一角である。南北を道路に挟まれ、北側がアプローチ道路で、南側は街路樹のアメリカ楓が年月をかけて大きく育ち、秋には紅葉も楽しめる。道路から1.2m程上がったところに地盤面があり、既存の擁壁を一部残してガレージをそのまま生かし、建物はアプローチに支障がない所まで北側に出来るだけ寄せて、南側に大きく庭をとった。南側は人や車の往来もあり、距離をとることでプライバシーも確保できる。またそれによって隣地の住宅の配置とずれることになり、北側のボリュームは隣地からの影響が少なく、採光や換気がしやすくなった。 建物の軒先を低く抑え、ガレージ裏の土間を通して南側の庭と街路樹の緑を垣間見せることで、建物を北側に寄せることによる圧迫感を解消している。この北と南をつなぐ土間は、年中風が吹き抜け、春や秋、夏の夜は涼しく、居間の延長としても心地良い場所である。
玄関の扉を開けると大きな吹き抜けになっており、南側の居間や2階の居室と空間が一体になっている。ガラス越しに、ほの暗い居間を介して見える庭のケヤキや街路樹が奥行きをより強調する。吹き抜けを介して2階のテラスから朝の光がさしこみ、寝室の上のハイサイドライトからは、やわらかく反射した光が、夏の夕刻には白い天井を薄紅色に染める。冬になれば、南側に設けた開口部から深く入り込んでくる弱い光を、北側の大きな壁が受け止める。黒い外壁とは対照的に、内部は壁と天井を白くして、中央部の柱や梁、床組を現すことで、空間にリズムと奥行きを与えて、間口12mの大きな空間が小さく細切れで単調にならないよう意識して設計した。 部屋の用途や人の動作に合わせて、天井の高さや仕上げを変化させて、それぞれの領域をやわらかく分けながらも、南庭と連続する大きな一つの空間に包み込まれているような、そんな家になったと思う。
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