鳥取県南西部に位置する敷地は、中国山地の山々に囲まれ眼前に田んぼ、その先には日野川や伯備線を走る列車が見えるのどかな風景が広がる。 比較的交通量の多い敷地前面道路と隣家からの距離を確保しつつ、既存の車庫・倉庫をかわしながらも周囲の風景を取り込んだ建物にしたいと考えた。 また施主から「夫婦寝室と子供室を離して欲しい」、「独自性のある建物にして欲しい」と言う要望も考慮してプランを検討していった結果、十字型とする事で多方向に広がる風景(北東方向に広がる大山、北西方向に広がる古峠山、南東方向に広がる田んぼ・日野川・伯備線・宝仏山等)を各居室から取り込む事が出来た。 十字型の建物の中心にダイニング・リビングを据え北西・南東両側に夫婦寝室と子供室を配置し、全ての間仕切り壁と天井との間に三角状の隙間を設け各居室同士をゆるやかに繋げる事で、家族の気配を感じながらも程良い距離感を保つ空間となった。リビングの北西・南東2方向に大開口を設ける事で周囲の田んぼや山の風景を室内に取り込む。その大開口を全て開放するとリビングは外部と繋がる半屋外のような空間となる。それとは反対にリビング以外の居室は小さな開口部とする事で篭れる居場所を確保した。 前面道路や隣地に近い十字型の妻側を閉じ、道路・敷地境界から奥まった平側に開口部を設ける事で前面道路及び隣家からの程良い距離感をとる事が出来た。 十字型の中心には施主の実家の大黒柱の一部として使われていたケヤキ材をかぶら束として再利用し記憶の継承を図った。建物外周の壁面以外には柱を用いない特殊な構造とし、4方から集まる7.5mの棟梁と登梁の中心にかぶら束を据える事で中央のダイニングに求心性をもたせた。 建物が周囲の自然に溶け込むよう外壁には焼杉を用いようと考えた。実際に焼杉の生産地に赴き耐久性を調査したところ、30年以上経っても耐久性には問題ない実例を多く確認出来たが、強風で飛ばされてきた飛来物等による炭の剥離が気になった。 そのはく離に備え焼杉と焼杉の間に貼る焼目板をルーバー状に貼り焼杉の層を2層にする事で、炭の剥離による問題点の解決と耐久性の向上、そして特徴的な外観をつくりだした。
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