大阪府泉南の郊外、熊取町にこの敷地はあります。正面の田んぼには稲穂が揺れ、隣接してビニルハウス。少し離れた場所には小さいながらも酪農を営む農家。秋にはだんじりが曳かれる里の風景。しかし周囲にはニュータウンが迫り、建売りの住宅も立ち並び、風景を切断してしまっています。
断片化された里の風景にふたたび連続性を取り戻すために、均質的で都市的な住宅の形態とは違う、郊外の住宅の在り方を模索しました。小さな小屋を連ねたような外観が、ばらばらな風景をつなぎ合わせるリズムを生みだします。田んぼと連続しているかのように配置したウッドデッキでは、おばあちゃんが孫をあやし、ペットと子供が遊びまわり、友人たちが集い、熱っぽくだんじりの打合せをします。人々の生活の姿は建物の外観となり、風景の大切な一部となります。
家の中では、それぞれの小屋のすき間から光や風景が取り込まれ、変化に富んだ多次元的な感覚とダイナミックな動きをもたらします。形状の動きはそのまま空気の流れとなり、小屋の一番高いところに上昇し抜けて行きます。連なった内部空間を抜けていく空気の流れは、冬は暖かく、夏は涼しい気持ちのよい暮らしを作ります。
家の存在と家族の暮らしがともに周辺の環境と呼応し、あたらしい風景を生みだすようにとの思いで設計しました。
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