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記事作成・更新日: 2015年 4月10日

欲しいものは自分でつくる。再建築不可物件だからできること

築年数50 年、再建築不可、駐車場なし。放置状態だった民家を購入し、自分たちの手でつくり変え、ここにしかない空間に磨き上げる。

photograph_ Kiyotaka Kinoshita

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天井を抜いて梁を現し、開放的にリノベーションしたダイニングとキッチン。自然素材にこだわり、壁を白の天然漆喰で塗装した。味わいのある家具が、以前からこの家にあったかのように空間に馴染んでいる。

京田辺のリノベーション

京都府京田辺市
〈設計〉濱田設計測量事務所

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・住人データ
夫(43歳) 飲食店経営
妻(40歳) 主婦
長男(10歳)
長女(8歳)


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道路から細い路地に入ってしばらく進むと、旺盛な植栽に囲まれた昔ながらの平屋建てが現れる。

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耐震補強工事で家を解体した際に出た廃材を使い、ご主人がフックハンガーを自作。玄関で鞄掛けに使用。

大阪市内で飲食店を営むご主人のMさんと、奥さま、小学生のお子さん2人が暮らすのは、昔ながらの民家が並ぶ京都郊外の住宅地、敷地面積150坪に建つ平屋建てだ。数年間探し回ったあげくに惚れ込んで購入したのは、築50年の古家付き、再建築不可の物件だった。

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左・ダイニングを中心に独立した3つの部屋が囲む3DK。奥の和室の上にロフトを計画中。/右・前庭に面した縁側スペース。四季の移り変わりを眺めながらゆったりと時間を過ごせる。

「ここは、建築基準法で定められた接道要件を満たしていないため、新しく家を建てることができません。でも、むしろその方が私たちには魅力的でした。もともと新築に興味がなく、古い家で好きなように手を加えながら暮らしたいと思っていたし、値段も破格でした。立派な前庭と広い庭付きで、子どもたちものびのびと遊べます」(ご主人)

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キッチンカウンターの上に大理石を置き、パンの生地や麺をこねるスペースに。

リノベーションの相談を受けた建築家の濱田猛さんも、
「なんという家だと思いましたよ。前庭で見事に染まった紅葉越しにむくり屋根が見えて、風情がたまらなかった。これはいいものを見つけたなと思いました」

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屋根瓦の一部をガラス瓦に取り替えて室内の明るさを確保。

耐震診断結果を受けて、耐震補強工事を施し、リノベーションをスタート。どんなプランにするか決めるのも内装工事も、Mさんご家族が行うセルフリノベーションとした。コストや工期を削減するため、工事にはご主人が経営する飲食店の常連客やご友人たちにも協力してもらい、濱田さんは資材の調達や設計・施工のアドバイスなど、専門的なサポートを担当した。

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左・玄関はもともと広めのつくり。和ダンスの引出しを引上げ扉にアレンジし、下駄箱として使っている。突き当たりの本棚もご主人が製作。/右・家具や小物は、古いものを愛する奥さまが古道具屋やリサイクルショップをまわって見つけてきたもの。長女も古いランドセルを愛用している。

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背の高かったアンティークチェストを解体し、下半分の小杯引出しをキッチンとダイニングの間仕切りに設置。キッチンは既存のままだが、

窓辺の収納棚はご主人が杉板で製作。

大きく空間を変えたのは、キッチンとダイニング。細切れで使いにくそうだったキッチン、和室、廊下を一体化し、天井を抜いて広々とした空間とした。壁には白の天然漆喰を塗装し、ダイニングの床には断熱ウールを敷いて、杉の無垢フローリングを張った。

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左・裏庭に面する子ども室。オリエンタルなテーブルセットで読書や工作などを楽しむ。/右・梁に登り綱を取り付け、アスレチックのように元気な子どもたちが遊び回れるようにした。

約8ヶ月間手を掛けて、ようやく住める状態になり入居。インテリア好きな奥さまのセンスが光るアンティークの和家具や小物がそれぞれの空間を彩った。
セルフリノベ生活2年目。家をつくっているうちに、DIYのコツを覚えていったというご主人オリジナルの家具や木工も増殖中だ。

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左・食品保管用につくったストック棚/右・樹木に覆われた前庭。

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左・子ども部屋の壁に漆喰を塗るときに、長女が思い出に刻んだ絵。/右・トイレは設備を一新。流木でつくったペーパーホルダーがユニーク。

「今後は、子どもたちの遊び場になるロフトの設置や、長男の学習机の製作、裏庭の畑づくりにも取り掛かりたいです」(ご主人)

絶えることのないエネルギッシュな創作意欲が、この家にしかない魅力をつくっている。

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既存の洗面台に廃材でつくった扉や壁付け収納ラックをプラス。


〈物件名〉京田辺のリノベーション〈所在地〉京都府京田辺市〈居住者家族構成〉夫婦+ 子供2人〈建物規模〉平屋建て〈主要構造〉木造〈築年数〉約50年〈建築面積〉96.23㎡〈床面積〉 96.23㎡〈設計〉株式会社濱田設計測量事務所〈施工〉Mさんご家族〈設計期間〉3ヶ月〈工事期間〉7ヶ月〈竣工〉2012年〈総工費〉約300万円


Takeshi Hamada


濱田 猛

1975年 大阪府生まれ。
2003年 京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科造形工学専攻修了。
03 ~ 06年 コンパス建築工房。
06年~ 濱田設計測量事務所。
04年~ 聖母女学院短期大学非常勤講師。

大阪府寝屋川市秦町1番3号
TEL 072・823・7935
FAX 072・825・1287
info@hamada-design.com
www.hamada-design.com


※この記事はLiVES Vol.71に掲載されたものを転載しています。
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