独立前、大宇根建築設計事務所での担当作で、公営の日帰り温泉施設です。蔵をイメージしたデザインですが、スケールが全く違うため、間延びしないように、また、単なるデザインの引き写しとならないようにディティールに気を使って設計しました。敷地は間口40mに対して奥行きが100m以上もある先すぼまりの変形、しかも南側には天井川の堰堤がある、北側は下水処理場、という地方都市にしては相当な悪条件でしたが、分棟スタイルと中庭の挿入でなんとか良い雰囲気の空間でお風呂に入ってもらえるようになったと思います。浴室のインテリアは完全に所長の趣味ですが、サーモンピンクの明るい煉瓦タイルと暗緑色の鉄平石を浴室毎に使い分け、定期的に男女を入れ替えて楽しんでもらえるように考えました。小さい割には浴槽の種類が多いのは町の担当者の健康増進への強い意欲からで、単なるレジャー施設に留まらない温泉利用が期待されています。なお、温泉は残念ながら基本は循環ですが、源泉のみが流れ込む「源泉ぬる湯」も小さいけれども用意したところ、いつ行ってもここが混んでいます。
(写真撮影:増田彰久)
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