敷地は広島県三原市中心部から車で30分ほどの山間にある。東側はこの地域を南北に抜ける道路に面し、南側に祖母と両親が暮らす母屋、西・北側には竹林を背負う。離れて暮らす夫婦が、ご主人の生まれ育ったこの土地に戻り、祖母・両親と一緒に暮らすための2世帯住宅の計画である。施主からは「1世帯住宅の延長線上にある2世帯住宅」を求められた。2世帯住宅を設計する際には”世帯間の分け方”が課題となるが、家族の形態は10年、20年という時間単位の中で変化していく。その変化に対して包容力を持った器として機能する住宅を目指した。外観は、自然に囲まれたこの土地で周囲に呼応しながらも堂々とした建ち方とするために、生活空間を収めたボリュームの上に深い軒を持つ平らな大屋根を掛けたシンプルな形としている。内部は1階に家族共有のLDK・水廻りと親世帯の寝室を配置し、2階を子世帯のスペースとしている。家族の仲が良く、1階のLDKに全員が集まることが多いため、LDKを中心としながら吹抜や引戸の開閉により自分たちで全体に多様な繋がりを作ることが出来る構成とした。また、内外壁、天井高、吹抜、軒下空間などのエレメントを通常の住宅スケールよりも大きく用い、世帯間あるいは部屋と部屋の間で「共有」させることにより、一見すると単純な構成ながらも、どの部屋が何の用途なのか、2世帯住宅なのかどうかさえもはっきりとしない「不透明」な状態を作っている。ひとつひとつのエレメントのスケールを大きくすることで大らかさの中に距離感や拡がりが生まれ、エレメントを共有することで全体に繋がりが生まれている。ひとつの屋根の下で暮らす家族としてのまとまりを持ちながら、様々な変化に対してフレキシブルに対応出来る住宅となった。
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