緑の多い新興住宅地の北端、のどかな風景を残している環境の中にこの敷地はある。 南北に伸びる形状で北側には川が流れ、計画当初は土手に林があった。緩やかな傾斜で南に下り、遠方には山々が見える。自然に恵まれ緑に囲まれるような立地条件である。 出来る限りそれらの風景を取り込みながらもプライベートな庭が要求されたので、コートハウスによる構成で周囲との繋がりと居室の快適性をコントロールするよう試みた。
中庭との一体感をより強めるために、庭側に立つ壁を極力少なくして建具を全て開放できるよう設えた。 大型の木製建具は東側に2枚南側に1枚で、独特の動きでスライディングするものをだが、コツさえ掴めば女性でも簡単に動かすことができる。 中間期は非常に過ごしやすい気候なので、害虫さえ気にしなければ(網戸は収納式)縁側のような居室空間が広がる。 プライバシーを重視するあまりに外部環境を全く意識できないような空間よりも周囲の風景や視線が少し抜ける程度が望ましいと考えて中庭を閉じすぎないよう心がけた。
居住空間は天井高を少し抑えることで横長のプロポーションの壁や庭の長さを強調している。さらに中庭との関係において、その移り変わりや
空気感がダイレクトに感じられるよう各ディテールには気を配った。階段はメッキ処理されたスチールの単板が自立している。
躯体はRC造の壁構造で解かれているが部分的に鉄骨の無垢柱で補強することで浮遊感と軽快さを与えている。コンクリートの外壁は断熱塗料で塗込められているが、打ち放しの痕跡をわずかに残しながら漂白することで打ち放しとは別の抽象化を試みた。 コンクリートと鉄の素材感は、この建築の重要なテーマでもある。 中庭の構成は新しいものではないが、庭との関わり方によって様々な空間性と多様性を生み出す。 この住宅は、その可能性を広げる試みの一つであると考えている。
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