「やってくる光」を求めた小住宅。
敷地は公園や緑が多く、よく整備された住宅街の一角。
しかし敷地の西側は幹線道路に面し、
残る3方はそれぞれ住宅が近接していました。
だからどのように窓を設けるか、ということは
内部空間にとっては重要なテーマでした。
私たちは直接に窓から見える景色からではなく、
そこからやってくる光から、広がりや奥行きを
感じられるような窓のあり方に興味を抱き、
そうした窓を各所に効果的に取り入れることで、
住宅に繊細さと大らかさを持たせることが出来るのでは
と考えました。
「やってくる光」とは、窓から外の景色が見えなくても
景色を構成する色の成分を一緒に連れて来てくれる
反射光のことです。
空の青や、庭木の緑や、外壁のエンジを
状況に感応して仄かに映し「抽象的で感覚的な外」を
予感させる、繊細な受容器としての空間を目指しました。
プラン
車が趣味のご主人のために、
1階北側には2つのガレージを。南東の角には庭を配し
お花の教室であるクラスルームを対面させました。
プライベートな居室は全て2階に、
リビングダイニングを中心にその周囲をキッチンや
寝室が取り巻くプランとしています。
外観
幹線道路に面する西側は道路からの騒音と
プライバシーを考慮して窓は少なくしました。
代わりに、ガルバリウム鋼板の外壁と対比を成す
板壁のアウターガレージが大きく口を開いていて
家人を温かく迎えます。
階段
プライベートな空間へのアプローチとなる階段は
この住宅にとって特に重要な空間です。
天窓や階段上部を横切る窓台から廻り込む光は、
それぞれガラスや壁面の色を淡く帯びながら降り注ぎます。
階段を上下する人の動きと光のあり方を結びつけ
気持ちや空間の切り替りを演出しようと試みています。
リビングダイニング
ここには3つの窓を設けました。
テラスに面した掃き出し窓は
今後充実してゆく庭の緑を楽しむための窓。
南側のハイサイドライトから入る強い光は
直接床に落ちるのではなく、窓台で反射し
天井を伝う柔らかな光に変換され部屋を優しく包みます。
またデスク前の吹き抜けに繋がる窓では、
奥に見える壁に陰影のグラデーションが刻々と
その表情を変えて、この空間に不思議な奥行きを与えます。
3つの窓から入る光が混ざり合いながら
一日を通して部屋全体に緩やかな変化をもたらします。
この変化をより効果的にするために、壁と天井は
大理石の粉を含んだ表情のある塗装で仕上げています。