不動産・工務店・設計事務所が共同し、建売住宅の新たな可能性を模索するプロジェクトの第1弾である。このプロジェクトの特徴は3者がそれぞれの強みを活かし、エンドユーザーに適切な価格で、いままでの建売住宅では実現できない良質な住まい方を提案できることだと考えている。そのため、いわゆる規格化住宅ではなく、1軒ごと異なるコンセプトの建売住宅を今後も企画していく予定である。我々、設計事務所の課題としては、建売住宅としての一般性を確保しながらも、敷地環境に合わせたコンセプトを立案し、それを限られた予算内で実現させるデザインを施すことであった。
今回の敷地は細長く、交通量の多い旧街道と線路に挟まれた、住環境としてはあまり好ましくないロケーションであった。子供を持つ30代の夫婦が住まうことを想定し、延床30坪程度の2LDK、庭付きで駐車場は2台という、この地域に建つ建売住宅の標準仕様を設計条件とした。
雑多な周囲に対して、天井が高く明るい風通しの良いエントランスと階段室を緩衝エリアとすることで、視線や音、光や風をコントロールし、快適な住環境を得ようと考えた。空間構成は、LDKと寝室は2層、水まわりと子供室とロフトを3層にまとめ、緩衝エリアと組み合わせたスキップフロアとしている。構造躯体剥き出しの屋根とは対照的に、部屋を仕切る白い壁を門型に連続させ、奥に進むごとにさまざまな表情を持つ空間が展開するよう計画した。ひとつひとつの部屋はある程度独立しながらも、緩衝エリアを介してゆるやかに外部までつながり、立体的な奥行きを感じさせる住空間が実現できた。
土地込みの販売価格を、近隣の同規模新築マンション1室とほぼ同額にできたことも重なり、エンドユーザーには大変好評をいただくことができた。最終的には工事中にめでたくお住まいになる方が見つかり、完成後すぐに新しい生活が始まっている。
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