建て主の奥様はお住まいに確固たるイメージがおありでした。武田五一設計の名和昆虫館の雰囲気がお好み、ジャコビアン様式のインテリアも織り交ぜたい…など、かなりハイレベルでピンポイントなご要望があり、それにお答えするためには我々も色々と勉強が必要でした。
建築としてはいくつかの箱を組み合わせたような構成で、結果としてスキップフロア、かつ凹凸の多いフォルムとなっています。(その関係を示す意味で、箱下のガレージから中庭に抜け動線があることは重要でした)仕上げなどもバリエーションに富んだつくりで、かなり複雑な構成ですが、個々の場所で異なるテイストをそれぞれ醸し出すため、必然的にそうなっていったような気がします。
その中でも洋風クラシックな雰囲気のLDKに隣接する、小さな和テイスト書斎コーナーは奥様が最も注力した部分です。もしかしたらこの場所をつくるためにこの家を建てたと言えるかもしれません。そして以前所員旅行で宿泊した京都俵屋の書斎コーナーの実測が、この部分の設計でとても活かせました。