最初に建て主にヒアリングした際、「雨宿りができるといいね」とおっしゃったことが印象深く、まずはこの感覚を大切に設計していきたいと思いました。ご主人は外国の方ですが、しばらく京都に住まわれていたこともあり、このような感性をお持ちになったのかもしれません。
外観的には路地側の浮いた直角三角形のボリュームが特徴で、これが長い玄関ポーチ(=雨宿りできる場所)にもなっています。内部は限られたスペースを開放的にするため間仕切りは最小限に、かつ個々の領域を明確にするため薪ストーブを中止に螺旋状にスキップアップしていく構成です。また、内部建具は全て引戸で、可動間仕切りやスクリーンで仕切る部屋もありますので、全て開け放てばワンルームとも言える空間になっています。
緑の眺望もこの住まいの重要なポイントです。南側中央の中庭は内部のいたる所から、北西側凸部の坪庭は茶室にもなる和室の地窓から、北側隣戸の高木は借景として2階の洗面室やトイレから、常にそれぞれの趣きの緑の景観を楽しむことができます。そして、中庭東側の壁の一部を斜めのルーバーとしたのは、道行く人に雨宿りしながらこの庭を愛でていただけたらと思い計画したものです。