敷地は田畑広がる丘陵の麓にあり、豊かな自然に囲まれています。
建主は、国土地理院発行の1/25,000地形図を基に独自の登山ルートを描き、GPSや無線機を携行せず独力で辿る知的登山を毎週している明朗快活な70代夫婦。本計画では周辺環境を含め、積極的に生活を楽しめる空間とする一方で、年齢を考慮すると機能的な平面・断面構成は必須条件となりました。そこで、水廻りコア(洗面所・浴室・トイレ)を活動する場と寝る場で挟み込み、基準天井高を1,800mmに抑えています。
また年齢に関わらず、空間を知覚し反応する心を育むためには、自己の領域の設定や、空間の重心・光・風に対しての感じ方に自由度を与え、更新できる状態をつくり出すことが重要であると考えました。そこで、基準天井高1,800㎜+屋根裏高195㎜の上部に高さ1,050mmの余白を挿入して、空間のこちら側とあちら側を、敷地境界線を超えてはるか彼方まで水平方向に繋ぐ機能を果たします。また2箇所に設けたスリットガラス屋根は天井裏、空へと垂直方向に空間を拡張させます。