ごく一般的な天井高のマンション住戸を、立体的に切り分け、土間、寝室、子供室に。床面積をプラスする、機能的で大胆なプラン。
text_ Yasuko Murata photograph_ Ayako Mizutani
T邸
神奈川県川崎市
〈設計〉株式会社キー・オペレーション
〈企画〉株式会社リビタ
間取り 3LDK→2LDK+2S
面積 69.52㎡
築年数 22年
居住者構成 夫婦+子供1人
玄関を入ると現れるのは、人の身長ほどの高さがあるシナ合板の壁。その内側は上下2層の空間になっており、下は収納、上は子供室と寝室として使われている。
「一般的な天井高さのマンションの住戸でも、ロフトを造ることはできます。使える床面積が増やせれば、暮らしの可能性も広がります」
そう話すのは、T邸の設計を手がけたキーオペレーションの小山光さん。この家は、株式会社リビタが展開する一棟まるごとリノベーション物件「リノア元住吉」の一住戸。住まい手のTさんご夫妻はともに30代の会社員で、2歳のお子さんとの3人暮らしだ。小山さんが設計したリノア元住吉のモデルルームを見て、漠然としていた家づくりのイメージが明確になり、専用庭付きの69㎡の住戸を購入して、小山さんとの家づくりに臨んだ。
スケルトンの状態からリノベーションした住戸は、ロフト部分、回遊性のあるオープンキッチンと黒板塗装の壁で囲んだ水まわり、デッキと専用庭へつながる開放的なリビングという、3つのパートに分かれたプラン内容。奥さまは、
「家族が同じ空間に集まって過ごせる家にしたかったので、閉じた空間のないオープンな間取りをイメージしていましたが、実際の暮らしでは、ある程度は区切りやプライバシーも必要。そう小山さんにお話ししたら、提案されたのがこのプランでした」
ロフトを囲む壁は天井までの高さとはせず、家族の気配が伝わる高さに設定。これは、ロフト内の寝具や寝姿を見せないようにするためでもある。また、リビングと寝室・子供室の間には、収納たっぷりのキッチン、水まわりを配置し、間に通路のような空間をつくり、ひとつながりの住まいの中に緩急をつけた。
「斬新なプランでしたが、提案された時にとても好奇心を刺激され、このプランに住んでみたいと思いました。いろいろな使い方ができるロフトは非日常的な雰囲気で、毎晩秘密基地で眠るようなワクワク感があります」(ご主人)
暮らしのシーンに合わせて家族がコンパクトに過ごせる機能的な要素に、ダイナミックな空間構成を取り入れ、楽しさや遊び心も加味したプラン。面積も容積も限りあるマンションの一室に、新たな床と空間の可能性をつくり出す、立体的なアプローチを参考にしたい。
〈物件名〉リノア元住吉・T邸〈所在地〉神奈川県川崎市〈居住者構成〉夫婦+子供1人〈建物規模〉地上5階建て(1階部分)〈主要構造〉鉄筋コンクリート造〈建物竣工年〉1989年〈専有面積〉69.52㎡+専有庭〈設計〉小山 光+キー・オペレーション〈施工〉株式会社アーキディレクションズ〈事業主〉株式会社リビタ〈設計期間〉2ヶ月〈工事期間〉1ヶ月半〈竣工〉2011年〈総工費〉約1000万円
Akira Koyama
小山 光 1970年 東京都生まれ。94年 東京都立大学工学部建築学科卒業。96年 ロンドン大学バートレット校建築修士修了。98年 東京工業大学理工学研究科建築学修士修了。David Chi pperfield Architects等イギリスの建築事務所で設計活動後、2005年 キー・オペレーション設立。英国登録建築家。英国王立建築家協会会員。
株式会社キー・オペレーション
一級建築士事務所
東京都目黒区鷹番3・21・21野本ビル 2F
TEL 03・5724・0061
FAX 03・5724・0062
info@keyoperation.com
www.keyoperation.com
※この記事はLiVES2011年10月号に掲載されたものを転載しています。
※この記事はLiVES Vol.59に掲載されたものを転載しています。
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