『Sky Field House』
正面を竪格子で覆われた黒い片流れ屋根の住宅。空を感じる開放感のある主室。眺望の利く東面にバルコニーを重ね、最上部には浮遊感いっぱいの花見台を設けている。蔵戸など古い民家の建具を利用し、懐古的な意匠を組み込んでいる。間仕切り壁を真壁として扱った木造表現としている。
丘陵地の東斜面の地勢に位置する敷地は、東に遠景に山並みを望み、近景には桜の木立に囲まれた谷戸池を見下ろす。その眺望を獲得する2階は開放的な主室、1階を庭に面したプライベートな個室、浴室とする。
西入りで東西方向に長い長方形の敷地は、道路側から前庭(駐車スペース)、建物、東側の庭と3つのゾーンに分けられる。 東斜面の造成地のため、東側は盛り土の地盤で、地耐力がないため建物は避け、まとまった家庭菜園とする。西、道路側は駐車スペース、客用駐車とガーデニングの開放されたスペースとする。
斜線制限により北側の高さが決まり、そこから南上がりの片流れ屋根とする。2階の天井は屋根に沿って斜めに上がり南側に高窓を設け、部分的にロフトとして利用する。東側に3段のバルコニーがある。1階は寝室に面したサービス用、2階は居間と連続し、その上は谷戸池の桜が望める1坪ほどの花見台で、居間からの梯子で上がる。
主室はオープンキッチン、食堂、リビングの大きく開放的な一部屋でレッスン室が格子戸で仕切られている。東側は水平に眺望が開け、南側の横長の高窓から空が一日中見渡せる。
木造の表現として、外壁面は大壁、間仕切りはすべて真壁としている。2階主室は柱と梁の木造フレームが露出し、ダイナミックな木造表現となっている。構造木材は県産材(丹沢)で、柱は桧材、梁には杉材を使用している。
外張り断熱エアーサイクル工法とし、床下から外壁体内、天井裏を空気が循環する構造となっている。基礎立ち上がり部の給気口は外気温により自動開閉し換気量を調節する。屋根裏の排気口は電動エアーオープナーにより、夏は開放して熱気を排出し、冬は閉じる。壁内換気により快適な室内環境を実現する。壁内結露もふせぎ、構造材を乾燥状態に保ち、耐久性を高めている。桧縁甲板の勾配天井の上部の平らな部分の天井裏が排気チャンバーとなっている。
西側道路に面した外壁にレッドシダーの竪格子を取付け、目隠しと遮熱を兼ね、ファサードの統一感を高めている。その他の外壁は耐候性を考慮し黒いガルバリウム鋼板小波板で覆う。
玄関扉は古い民家の蔵戸を使用し、2階の主室に面した4箇所にも古い格子戸、ガラス戸、板戸を嵌め込み、懐古的な要素を取り込んでいる。
ペニンシュラ型キッチンカウンターは現場製作とし、天板はモルタル金ゴテ仕上げのうえコーティングをする。台所は奥の家事室と連動し、家事の表と裏の関係が作られている。レンジ前の小窓から東側の景色が覗ける。
玄関ポーチには蔵戸と開き戸の2つの戸がある。玄関脇の大容量の納戸にはポーチから直接出入りできる。
内装は自然素材を選んでいるが、1階プライデートゾーンと2階パブリックゾーンで意匠を変えている。1階はナチュラルな仕上げの桧無垢フローリングで柔らかな印象、2階の床はカバのパーケットフローリング、柱梁も黒く染色して、力強い印象となる。壁の珪藻土は1階には黄色、2階には紫色を微妙に配合している。
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