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敷地は、沖縄県読谷村の住宅密集地の、変形敷地である。クランク型に通路状の土地を連ねた先に70坪程度のまとまった土地がある。そこは公園を見下ろし日当たりも良いが、接道位置から距離があり、動線が長くなるのが難点だ。
本土出身の施主一家は、国外での生活ののち、沖縄にやってきた移住者である。彼らにとって人生は旅であり、家とは気ままに移り住むべきものだったが、ここ読谷村に暮らすうち、だんだんと事情が違ってきた。なんだか家を建てたい、つまり根を下ろして生活したいと感じるようになったのである。読谷のゆったりとした空気、人々にすっかりやられてしまったらしい。彼らの旅と定住、家族各々の独立した関係、読谷村のおおらかな気風。それらに似合う家はどんな家だろう。
 まず、道から駐車スペースを残し、ほどよく気安い位置に入口を設けた。建物は奥の開けた土地へと続く通路状の土地に、幅3.5mでまっすぐ25m伸びる平屋建。 沖縄特有の強い日差しとスコールから生活空間を遠ざけるため、南側に連続した庇を設け、これに日よけをスクリーン状にたてこみ、雨端(あまはじ)に習った中間領域とした。奥行きが小さく東西に細長い建物形状は、意図的に通風を得ようとするものでもあったが、庇に立て込んだ日よけと相まっていずれの居室にも適度な独立性をもたらすことになった。
 完成からほどなく、近所の住民がちょっとした土産を手にわいわいと訪ねて来た。長い廊下に置かれた本や雑貨が、ここに住む家族の人柄を口々に語る。10メートルほどの狭い空間は、一瞬だが施主が旅してきた人生の思い出に触れ、施主と客人をつなぐタイムトンネルのような存在である。廊下を抜けると、自慢の庭が一望できる居間が現れる。南国の日差しと、雨が贅沢に降り注ぐ大地。生命力溢れる熱帯植物が、どこからともなく運ばれて根を下ろし、鮮やかな花を咲かせている。 客人は雨端にむかって腰掛け施主と語らう。美味い酒と琉球の風。長い旅の成果である。

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高橋 幸子 +澁川 佳典

設計事務所会員
設計事務所会員とは
主に建築物の設計監理や建築デザイン等を行っている建築設計事務所や建築家を示します。
通常営業中です
竣工年
2011
部屋数
指定なし
家族構成
指定なし
構造
RC造
予算帯
1000万円以上〜1500万円未満
所在地
沖縄県
ロケーション
住宅地