広島市街地から車で東へ20分程に位置する閑静な住宅地に建つ、3人家族の住まいの計画である。計画地周辺の中から、生活のためにクライアントが探し出したのは、掘込車庫のある間口約9m奥行き約22mの南北に深い、3つのレベル差をもつ敷地であった。奥の最上段では菜園をとの要望のなか、掘込車庫の上部と敷地奥に空地を残し、性格の異なる豊かな外部空間に挟まれた、南北に抜けのある生活の場の実現を模索した。
敷地中央の中間レベルに自ずと配置することとなる生活スペースは、1階を主たる生活の場とし、リビングとダイニングを半透明の可動建具を介して繋げている。吹抜けをもつリビングの南にはスラブを跳ね出したテラスを配し、道路からの視線を柔らかく遮断する鉢植えの緑に大きく向き合う関係をつくっている。一方、ダイニング北側の空地には、順光を受ける草花や木々の見える裏庭を配し、開口全体がここに接する。これら全ての床を、同一素材とすることで、内外の関係が曖昧となり、全体が連続する気積となることを試みている。
定期的に自宅でヨガ教室を主催する夫人は、リビングをその活動の場としている。そのため、リビングは、時に住まいと独立して機能する必要があった。玄関と繋がるプラン中央に位置する階段と、そこに隣接させた家族の動線ともなる納戸をコアのように配置してあるのはこのためである。
リビングの吹抜け上部に見える寝室間に配した収納は、互いの室が連続して繋がるように曲面をもったオブジェのように配し、吹抜けを介して対峙する。また、リビングと階段の間の壁も、上部トップライトとガラス床を介して、表と裏そして上下階の気配を感じる仕掛けとなっている。コンパクトな住宅において、こうした異なる室を関係づける試みは、行き止まり感がなく視覚的に連続する光に溢れた大きな気積をつくり出すのに有効な手だてとなった。
そしてファッサードのエキスパンドメタルが、内外を繋ぐ光の緩衝帯として、昼間は外部からの視線を適度に遮断しながら、生活空間を柔らかく包む皮膜となっている。
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