4人家族の住宅の計画である。敷地は、北側の山頂部に寺を構える裏山の足下にあり、南北に細長い。江戸時代には山陽道の宿場町のひとつであった周辺は、幅員の狭い道路の両脇に、木造家屋が点在し、当時の面影漂う街並が今も残っている。そのため、前面道路に対しては、宿場町にスケール感を併せつつ、敷地脇の空地から見える外観においては、街並に対して圧迫感を持たせないことが肝要であると考えた。建物ヴォリュ—ムを比較的小さく抑えながら、そこに如何にして大きな気積を空間に内包させるか、これがここで取り組んだテーマであった。
全体は、拡幅の可能性のある計画道路側に鉄骨造による2層の棟、その奥に鉄筋コンクリート造による3層と4層を組み合わせた棟を配した構成とした。採光や通風の確保のため、各棟の平面や断面にずれや隙間を設けながら、それぞれが外気に有効に接し、また外気を挟みながら向き合う諸室関係をつくり出している。
2階に設けた主たる生活スペースは、リビングを2層棟に、ダイニングは3層棟にと、離して配置し、トンネル状の動線空間で繋いでいる。こうして対峙する室には、床レベルを僅かにずらし、斜めに交錯する視線をつくることで、1階から3階までを含む大きな視覚による気積を内包させた。また奥行きを浅く抑えつつ天井を高く設定したリビングでは、エキスパンドメタルを介した大開口からの柔らかい光が纏い、あたかも木漏れ日に包まれたような内外が曖昧となった場が実現した。
軽やかな押出成型板とモノリシックなコンクリートを組み合わせ、大きな一枚壁になりがちな側面ファサードに異なる素材の混在させた立面は、エキスパンドメタルによる柔らかいファサードと共に、木製格子の点在する街並に新しい表情を与えている。
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