夫婦二人が穏やかに暮らすためのシンプルな家。大きなひとつ屋根(天井)の下、互いの気配や外の景色の移ろいを感じながら暮らせる住まいを目指しています。二人が暮らすに必要十分な広さ(20坪)と、穏やかな室内環境、イニシャルコスト(建築費)及びランニングコストの低さ、維持管理のしやすさが求められました。
プランニング_内部は九つの区画に緩やかに機能を割り当て、大きな屋根を架け各室が欄間で繋がるシンプルな構成で、ベッドルームを中央にダイニングキッチン、趣味の部屋や水回りを配置しています。欄間で繋がることで視線の抜けや、天井に映る光から外部や互いの気配を感じることが出来ます。
南面のダイニングには大きな開口からは日が燦燦と入り、庭や隣家の緑、遠くの山が望むことができ、庭に伸びた広い庇とテラスは夏の日差し、雨などを遮ると同時に内外の繋がりをつくりだします。
また、柱と現しの梁(長押)は地場の杉で、壁、天井は穏やかな風合いのシナベニヤ、ダイニングの床は蓄熱のためにコンクリート+モルタル、それ以外はヒノキのフローリングとし温かみのあるインテリアとしました。
天井高さは低いところで2050mm高いところで3050mmと各スペースの活動内容と呼応するように変化をつけています。小さいながらも緩やかな広がりや光の変化を感じられる構成となっています。外壁には周囲の環境や緑になじむよう杉板を張っています。
温熱環境_シミュレーションソフトで検討を繰り返し、断熱性能、日射取得のバランスを探りました。断熱性能に関しては、開口部は木製サッシまたは樹脂サッシ+Low-Eガラス、外壁は高性能16KGW100mmに付加断熱50mmを設置、屋根は同GW200mmとして、(特段の必要性がなかったため性能評価等は取得していない)UA値0.47 [W/㎡K]とHEAT20 G1レベル(0.46)に近い性能を確保しました。
床下を基礎断熱、基礎立ち上がりを極力少なくし、床下エアコン方式を採用することで、低コストで全館冷暖房を実現しています。また、24時間換気ファンには全熱交換式を採用、リビングの天窓は換気の重要な役割を兼ねるなど換気、通風にも配慮しました。開放的でありながらも身体、家計、環境に優しい住宅となっています。
写真:片山文那(ミツバコウサクショ)