間口約5m、奥行きは約27mあり、中ほどに小さな中庭を持つ正真正銘のうなぎの寝床で、通り庭に沿ってミセノマ・ゲンカン・ザシキが一列に並ぶ典型的な町家の間取りの築110年の京町家を、1階は事務所2階は住宅にリフォームしました。
改修内容は①床下全体に土間コンクリートを打ち、床・壁・天井ともに可能な限り断熱材を充填した。
②既存の柱・梁はできる限り生かし、必要に応じて取り替え、追加した。また柱と梁との接合部には仕口ダンパーを取り付け補強した。
③雨漏り対策とともに建物全体のシルエットを明確にするため、おもやの屋根を下地からやり直し瓦を葺き替えた。
④再生した町家のファサードとして老朽化した出格子は撤去し、嵌め殺しのガラス窓を新設した。夜遅くまで働く事務所の様子が見えることで、通りに活気が生まれることを期待したからである。
⑤中庭の一部に事務所スペースを増築したが、増築部分の上部を屋上テラスとすることで、連続する立体的なオープンスペースとして活用できるようにした。
⑥通り庭は動線として利用し、改造されていた2階の床を取り除きトップライトのある吹抜けを復活した。また、おもやとはなれの2か所にあった急勾配の階段を撤去し、中庭に面した通路に沿って新たに階段をつくった。
⑦居住スペースとしたおもやの2階に水回りを移設した。
⑧構造部材が化粧材として現れる町家の特徴は生かしつつ、用途や生活のスタイルに合わせた内部の仕上げを採用した。土足で使用する1階の床は長尺シート、2階の居住スペースは無垢材フローリング、壁はともにクロス貼である。
⑨はなれはおもやに比べると新しく、保存状態も良かった。1階は事務所として使用するが、床の間や欄間・建具等は温存し、必要になったらいつでも和室に復旧できるよう改修は最小限に止めた。
⑩はなれの2階にある和室には書院つきの床の間があり、保存状態も良かった。ここは壁を補修し、畳や建具を新調するに留めた。1階とおもやの2階が大きく様変わりしたなかで、この和室だけは改修前の姿をしっかり残している。接客の場として、あるいは昼寝や趣味の場として、さまざまなシーンに対応可能な空間として活用している。
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