築30 年の木造住宅の一部をリノベーション。
施主支給やDIY も取り入れた最小限の改修で子世帯住居の独立性を確保する、ライトな実家改修計画。
text_ Satoko Hatano photograph_ Takuya Furusue
HouseK
東京都北区
〈設計〉酒井康介建築設計事務所
・住人データ
親世帯
お母さま(66歳) 主婦
お姉さま(37歳) 会社員
子世帯
康介さん(36歳) 建築家
清子さん(31歳) 主婦
建築家の酒井康介さんは、実家の一部を改修して、お母さまとお姉さま、酒井さんご夫妻が暮らす2.5世帯住宅をつくり上げた。
「両親と祖母、子ども3人が暮らした築30年の木造住宅には、人数分の個室がありました。でも、母と姉の2人暮らしになって部屋が余り、建物の管理も難しくなっていました」
と話す酒井さん。お母さまには、二世帯住宅に建て替える考えもあったが、結婚して間もない酒井さんご夫妻の暮らしの変化を考えて、今回はライトな改修を目指すことに。
「5年後には本格的な二世帯住宅に建て替えるかもしれない。そう考えると、コストは最小限に抑える必要があります。具体的には、以前住んでいた賃貸マンションの家賃を基準に、2~3年で払い終える範囲としました。どこまでできるか実験的な側面もあります」(酒井さん)
お祖母さまの部屋だった1階和室と、その上階にある2つの子ども室を、独立した子世帯住居に改修する計画。母屋のLDKがある1階は世帯間を壁で隔て、互いのプライバシーを確保した。
さらに、子世帯にも小さな玄関をつくり動線を完全に分離。一方で、共用バルコニーのある2階には、母屋に続く内扉を設けた。
子世帯LDKは、2階の既存子ども室をつなげた14畳のワンルーム。
仕上げを剥がして小屋組みが顕になった天井が、木造住宅の歴史を物語る。梁下の壁は白く塗り直し、新旧部分のコントラストを際立たせた。
1階の和室は寝室に。既存の押し入れに0.5坪サイズのシャワーユニットを収めるプランが潔い。また、ヒノキ材の和式トイレはそのまま利用。洗面台は縁側に設置した。
DIYも実験的だ。2階天井の断熱と合板仕上げを酒井さん自ら施工。キッチンは天板を金物業者に発注し、水栓などはネットショップで購入。天板下の収納も自作品だ。
改修コストを計算し、それに見合う設計とDIYを実行するにはスキルが必要だが、酒井さんは、
「暮らしの変化に気軽に対応できるセルフリノベーションの可能性は、二世帯住宅にも広がると思います」
建築のプロでなくとも、本格的な二世帯住宅づくりのステップとして、ライトな改修にトライする意味はあるという。それを裏付けるように、家の新陳代謝を歓迎するお母さま。
「また住む人が増えて、この家ももう少し長持ちしてくれそうです」
〈物件名〉House K〈所在地〉東京都北区〈居住者構成〉母+姉+夫婦〈建物規模〉地上2階建て〈主要構造〉木造〈建物竣工年〉1983年(築30年)〈建築面積〉72㎡〈床面積〉1階 66㎡、2階 64㎡ 計 130㎡〈設計〉酒井康介建築設計事務所〈施工〉村上工務店〈設計期間〉1ヶ月〈工事期間〉2ヶ月〈竣工〉2012年
Kosuke Sakai
酒井康介
1977年 東京都生まれ。東京大学工学部建築学科卒業。
2002年~ 安藤忠雄建築研究所。
2010年 酒井康介建築設計事務所 設立。
東京都北区上中里1・5・9
TEL 03・6759・8056
info@kosukesakai.com
kosukesakai.com
※この記事はLiVES Vol.71に掲載されたものを転載しています。
※LiVESは、オンライン書店にてご購入いただけます。amazonで【LiVES】の購入を希望される方はコチラ