・敷地について
敷地は市街地の、数十年前に開発された住宅団地の一角である。その大きさはおおよそ60坪程度に区画され、木造瓦葺きの家屋が立ち並んでしる。近年は住人の世代が入れ替わり、あちらこちらで新しい住宅に建て替わっている。
・配置について
建築主からは、周辺からの視線を気にせず、のんびり過ごせるようプライバシーが守られた家にしたいと要望があった。敷地形状、方位から、太陽の光を受け止めるように敷地北側に住居部分を、敷地と道路の位置関係から敷地東部分に車庫を取り、L型配置とした。そして住居と逆L型に、南と西の境界線にそってH=4600mmコンクリート打ち放し塀を設け、その内側を中庭とした。
・平面計画について
建物の中心にリビングダイニングと設けた。その南側のプライバシーの守られた中庭と、大きな開口部でつなぎ、中と外の一体感のある生活エリアを作った。その中庭は、生活エリアから道路や隣地の建物が見えなくなり、日常の社会から解放される。そして敷地の中には青空に浮かぶ雲がゆっくり動き、中庭のヤマボウシがそよ風に揺れ、自分たちのための場所と時間を作り出す。リビングの上部の吹き抜けは、視線が抜けるため室内に居ながら広がりを感じる。また吹き抜け南側の2階窓から入った間接光は、1階への採光を確保する。限られた敷地面積で、最大限ゆとりのある空間を作った。
玄関ホールを入ったところに和室を設けた。そこには床の間と坪庭を配置し、建築主の実家から移植した紅葉を、和室の地窓と外部のエントランス付近から見える位置に植えた。和紙に岩砕印刷を施した「京からかみ」を内壁面に貼り、さわらかな印象の和室を作った。
建物の北側にコンパクトな動線で水廻空間を配置した。そしてその水廻り空間同士の間にジュンべリーを植えた2つのくぼみ庭を設けた。北面外壁に窓を設けることなく、そのくぼみ庭に向かって開口部を設けた。住宅団地でありがちな南北の視線交差を回避した。
・構造について
2階住居部分と平屋車庫部分は鉄骨造とした。地盤調査の結果、L=5500mmの羽根つき鋼管杭を打ち、地中梁により基礎を連結し安定させた。そして鉄筋コンクリート造H=4600mmの塀の自重は集中的に重くなるため、鉄骨造と同様羽根つき杭と基礎を設けた。さらに地震時の自立(ゆれ)検討の結果、鉄骨造から伸びる6本の地中梁で連結して鉄骨造基礎と一体化し転倒対策を行った。
また、地上部はS造とRC造の揺れ幅が異なるためEXPジョイントを設けた。車庫屋根はS造のため、南側のRC造塀とローラージョイトとした。
・設備について
インテリアをすっきり見せるために、可能な限り埋め込み照明や間接照明を用いたり、壁掛けエアコンを製作家具の内部や壁面に埋め込んで取り付けた。
特にこだわったのは、オリジナル製作キッチン。金属が大好きな奥様のご要望でキッチン材料はSUS304ヘアーラインステンレス板で統一した。バック収納カウンターも同材料で引き出しやスライドアミかごなど要望にも対応した。シンプルで機能的なキッチンが出来上がった。
限られた敷地の中で、ゆとりのある生活空間を造りました。
プライバシーに守られ安心して暮らせる中庭があります。
鉄骨造とコンクリート造を機能的に使い分けました。
大宗建設株式会社
TIワークス
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