昨今、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、建設材料の高騰が見受けられます。特に、木材についてはアメリカや中国での住宅バブルの影響により、国内への供給が不足し、購入したくても手に入らない状態で、現在も国内の木材価格が高騰を続け、“ウッドショック”とも呼ばれています。
建築価格を抑えるためには、今までは、最も流通量も多く経済的な木造が一般的ではありましたが、このウッドショックの時代では、違う方法を模索することも必要となり、木造以外での工法として、RC(鉄筋コンクリート)造での検討も注目されはじめています。
今回は、そんなRC造で1,000万円程の超ローコストに建てる方法はないか、建築士の目線で解説していきたいと思います。
木造以外での工法、RC造の特徴、RC造のコストが高い理由
日本の住宅建築の場合、木造が最も多く建てられています。
それは最も経済性が高いことが選ばれる理由のひとつとなっていますが、経済性だけでなく、強度や安定性、性能面から、他の工法で建てられる場合もあります。
木造とそれ以外の工法での特徴の違い
木造以外での工法としては、RC(鉄筋コンクリート)造、CB(コンクリートブロック)造、S(鉄骨)造がありますが、いずれにしても、同規模であれば木造に比べて価格は高くなる傾向があります。
木造とそれ以外での工法の違いとしては、材自体の安定性に大きな違いがあります。木材は、温度や湿気により材の伸縮が考えられますが、RC造やS造は、それらによる影響を受けにくい材となります。
材の伸縮による違いは、建物の精密度が変わってきます。
具体的には、木造のような材の伸縮が考えられる工法は、材と材の隙間を開け、ある程度おおらかにつくる必要がありますが、RC造の場合、それらの隙間は必要としませんので、遮音性、気密性、耐火性を容易に確保することが可能となります。
RC造の特徴とRC造のコストが高い理由
RC造は耐震性や耐火性、耐久性、遮音性等の建物の性能が最も高く、国の重要施設である庁舎や消防署、警察署、避難施設等にも採用されるぐらい信頼性は高いもので、個人住宅にはややスペックが高く、割高となるイメージではあります。
RC造のコストが高くなる理由として、上記で挙げた高性能な部分以外にも、木造に比べて工期が長くかかるところにあります。
木造では、工場でカットされてきた柱や梁等を現場組み上げて造りあげていきますが、RC造の場合、柱や梁等の構造部分は、現場で鉄筋と型枠を組み、コンクリートを流し込んで造ります。また、コンクリートは固まるまで、ある一定期間を必要とします。
工期が長くなれば、それだけ現場の経費が必要となり、割高となる要因となります。
また、RC造は木造やS造に比べ非常に重たい造りとなります。重量が大きくなれば、基礎の構造的な耐力がその分必要となり、地盤改良や杭基礎等、木造であれば不要だった補強も必要となる場合が多く、その分割高となります。
RC造で1,000万円程の超ローコストで建てることは可能なのか
そんな高性能で割高となる要因が多いRC造ですが、1,000万円程度の超ローコスト建築とすることは可能か。
それは、かなり難しいと考えられます。
RC造の坪単価は一般的なもので、100万円~となります。30坪であれば3,000万円以上となります。
単純に1,000万円程度で建てようとすると、10坪以下の家となります。
最低限必要となる水周りの坪数としては、お風呂1坪、洗面1坪、トイレ0.5坪、キッチン0.5坪で3坪は必要となりますので、あと7坪で必要諸室を配置することになりますので、ワンルームマンションのような間取り程度しか実現できません。
ローコストRC造を実現するには、どの程度の上乗せ費用が必要か
1,000万円の超ローコストRC造は現実的ではありませんが、2,000万円程度まで費用を上乗せできれば実現可能と考えられます。
それは、平屋で面積を最低限まで抑え、水周りも最低限グレードとすることで可能となります。
ローコストRC造を実現するポイント
具体的には、以下の4つのポイントがあります。
1.面積を最低限に抑える
2.平屋でつくる
3.水周りを最低限グレードでつくる
4.構造と内装を兼ねる
1.面積を最低限に抑える
玄関、廊下、階段等の移動空間を全て排除し、リビング空間がそれら移動空間を兼ねるようなオープンな間取りとすることで、建築面積を最低限まで抑えることが可能となります。
2.平屋でつくる
平屋にすることでRC造のデメリットでもある工期の問題が解消されます。2階建て以上のRC造の場合、1階にコンクリートを流し込んだあと、2階をつくるまでに、コンクリートが固まるまでのある一定期間を必要とします。平屋の場合は、その期間を省略できるので、その分の工期が短縮されることになります。
また、階段部分の面積を削減することもできますので全体の面積を抑えることに繋がります。
3.水周りを最低限グレードでつくる
建築費用の中で、高い割合を占めるのはお風呂、トイレ、キッチン等の水周りにかかる費用です。
それら水周りを最低限のグレードに落とすことで、全体の坪単価を抑えることになります。
4.構造と内装を兼ねる
RC造の場合は、手を加えることなく耐火性や遮音性、気密性を確保でき、そのまま壁や天井の仕上げとすることも可能です。壁や天井は一般的には、構造材を隠すように石膏ボードを張った上にクロスや塗装等の内装仕上げを行いますが、それらの内装仕上げは行わず、打放しのままとすることで、内装費用を抑えられます。
コンクリート打放しは、美しくつくると逆に高くなるので注意も必要です。
おそらく、一般の人がイメージする打放しは美術館や商業施設で見られる美しい打放しだと思われますが、その美しい打放しは実は非常に手間がかけられた高級な仕上げです。
美しい打放しは、型枠も専用のものを使い、できあがりが美しくなるよう左官を行い、さらにコーティングまで施していますので、塗装をするよりもはるかに高くなります。
見た目は粗々しくなりますが、型枠も普通のものを使い、仕上げも左官なしとすることで、内装費用を抑えることが可能です。
まとめ
ウッドショック時代での、木造以外での選択肢となるRC造ですが、1,000万円程度の超ローコストを実現することには、無理があります。
ただし、面積を抑え、内外装や設備グレードを極限まで抑えることで、2,000万円程度のローコストでRC造を実現することは不可能ではありません。
RC造は、木造の温かみとはまた違ったテイストで、荒々しさや堅牢感があります。また、コストを抑えるために内装を削減することで、インテリアにもコンクリート特有の雰囲気が備わります。
ウッドショックで木造の価格高騰と工期の長期化が懸念されていますが、こんな時期こそ、いままで検討の視野にも無かったRC造を考えてみることで、面白い発見があるかもしれません。
文:onearchi(一級建築士)
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