[可変的な空間のゾーニング]
一戸建ての住宅に比べて、立地を優先させやすいマンションで住むことを考えた時に、 住まいの中での可変性と、拠点を転々と移動しながら住む可変性をどちらも求めたいと思った。
一緒に住む家族の増減や、成長を見越しての室の配置、各室の接続の仕方と用途の設定を考えるにあたって、空間を[個室][半個室][パブリックスペース][水廻り]の4つのゾーンに分けた。
独立した個室をプライベートな空間として確保し、半個室とパブリックスペースは可動間仕切りで仕切られ、日常は子供室の他、仕事や勉強をする部屋等に充てておきながら、来客時には全体を広くパブリックスペースとすることもできる。
住むために最低限必要な水廻りを除いて、小分けにすれば3つの個室と1つのパブリックスペース、まとめれば1つの個室と1つのパブリックスペースといった巾のあるプランが可能である。
優先度が後回しになりがちな水廻りは限られたスペースに工夫して配置している。
狭くなってしまった洗面室は浴室との境界の間仕切りをガラスにすることで、洗面室・浴室の圧迫感を取り除いた。
[仕上、時間の対比]
既存天井と一部の壁の躯体コンクリートを露出し、既存の硬くて冷たいコンクリートと新設のあたたかく柔らかい杉板貼の壁・床との差を強調している。
古い躯体コンクリートと新しい杉板の新旧の関係が、時間の経過に伴う経年変化の進行の違いによってゆるく混ざり合うことも意図している。
シンプルな対比の空間に、ステンレスキッチンやタイルのアクセントによって動きが出た。
杉板貼の調湿効果によってRC造のマンションの結露対策にも出来る限りの配慮をしている。
[マンションに住むことの可能性]
RC造のマンションの法定耐用年数は47年と定められているが、(一人暮らしも含む)家族の形態は長くても20年程度で大きく変化することが予想される。
家族の形態の変化を超えてもっと長いスパンで存在するマンションでは、住戸の中での可変性にとどまらず、転居を繰り返しながら住むことも視野に入れる必要がある。
転居に伴い、住んでいた住戸を[売る][貸す][民泊に使う]など、立地さえ良ければ選択肢が増える。
立地を優先してマンションに住むということは、その時点での生活や家族に合わせた住み方をしながら、土地に縛られずに流動的に住むことができるととらえることができると思う。
[住みながら作り続ける住空間]
竣工直後は無駄なモノのないシンプルな空間ですが、時とともにどうしてもモノは増え、時には人が増えることもあります。
生活しながら竣工直後の状態を維持していくのは大変なことです。
これは、住んでみないとわからないこれらの生活の変化に、あえて家具を後から作ることで空間をすり合わせていこうという試みです。
もちろんこの試みに完成はなく、ホームページを更新するようにいつまでも作り続けることになります。
まずはダイニングテーブル、続いてテレビ台、壁面収納とまだまだ空間作りは続いていきます。
立地を優先して選んだ都会でのマンションリノベーション。
子育て世代の変化していく生活環境に合わせて、家具や造作等で微調整しながら住みます。
まだまだ続きます!
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