将来のことも考えて、築浅のマンションを選んでリノベーション。
木製ガラス引き戸で開放感と個室感を自在に操る、フレキシブルな空間。
text_ Yasuko Murata photograph_ Ayako Mizutani
小林邸
横浜市港北区
〈設計〉 Camp Design inc. 〈共同設計〉タトアーキテクツ
〈住人ケース〉
小林さんご夫妻
直剛さん (30歳) 広告制作会社勤務
さや香さん (31歳)ジュエリーデザイナー
リノベーションを前提に中古マンションを探したという小林直剛さんは30歳。奥さまで31歳のさや香さんと2人暮らしだ。何軒もの物件を見学する日々の中、散歩の途中で偶然見つけたオープンハウスで出会い、購入を即決したという物件は、駅から徒歩圏内の築8年、62㎡強の3LDK。立地、周辺環境、共有部の雰囲気が気に入ったという。
「将来的に関西に戻る可能性もあり、購入する家に永住するイメージはなかったので、売却や賃貸に出すときのことを考え、築10年以内を条件に物件を探していました」(直剛さん)
設計は、知人だったタトアーキテクツの島田陽さんに相談したが、島田さんは関西に拠点を置き活動しているため、島田さんがキャンプデザインの藤田雄介さんに声をかけ、共同で設計することに。各部屋がつながりを持ち、常にお互いの気配を感じられる間取りで、木を基調とした温かみのあるインテリアの住まいがほしいと希望した。
「以前の間取りでは、細長い住戸の中心に壁と扉があり、部屋が区切られていました。その構成を活かしながら、木製ガラス引き戸で全体を仕切り、必要に応じて開閉することで、空間の広がりを保ちつつ、フレキシビリティを持たせました」(藤田さん)
まだ新しいユニットバスや便器などの設備、壁や収納も利用できる部分を利用しながら、間取りとインテリアを一新。ダイニングキッチンに面して引き戸がずらりと並び、リビング兼さや香さんのアトリエ、水まわり、収納、寝室と仕切られている。
オリジナルデザインで造作した木製ガラス引き戸は、インテリア性が高いだけでなく、透明ガラス、型板ガラス、シナ合板を使い分け、視線の抜けと採光、目隠しの機能を、部屋によって使い分けている。
「普段から閉じているのは洗面室と収納の引き戸くらいで、オープンにしていることが多いのですが、冬は閉めて部屋ごとに暖房することもできます。引き戸を閉めても向こう側が見えるので圧迫感はなく、きちんと仕切られている感じもして、居心地が変わるんです」(さや香さん)
引き戸によって、開放感と個室感を自在に使い分けられるプラン。アトリエにしたり、家族が増えたり、将来賃貸に出したり、売却したり…。さまざまな可能性への対応力が求められた小林さんご夫妻の家づくりに、見事に応えるアイデアだろう。
〈物件名〉小林邸〈所在地〉神奈川県横浜市港北区〈居住者構成〉夫婦〈建物規模〉地上5階(4階部分)〈主要構造〉鉄筋コンクリート造〈建物竣工年〉2003年(築9年)〈専有面積〉62.39㎡〈バルコニー面積〉5.13㎡〈設計〉Camp Design inc. 藤田雄介〈共同設計〉タトアーキテクツ島田陽〈施工〉HandiHouse Project〈設計期間〉2ヶ月〈工事期間〉2ヶ月〈竣工〉2011年〈総工費〉約500万円
Yusuke Fujita
藤田雄介 1981年 生まれ。2005年 日本大学生産工学部卒業。07年 東京都市大学大学院修了後、手塚貴晴+手塚由比/手塚建築研究所 勤務。10年 Camp Design inc.設立。
Camp Design inc.
東京都目黒区目黒本町4・25・20・402
TEL 03・6303・2352
info@camp-archi.com
www.camp-archi.com
※この記事はLiVES vol.66に掲載されたものを転載しています。