キッチンと隣接する寝室に室内開口を設け、場面に応じてブラインドで仕切る。
広々とした抜けを持つLDKと、必要な個室の確保の両立を叶えたプラン。
text_Yasuko Murata photograph_Takuya Furusue
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モルタルで仕上げたシンクと一体となった木のテーブル。天板の高さに変化を付けて緩やかに領域を分けている。壁側のカウンターの一部はワークスペースに。
南雲邸
東京都江戸川区
〈設計・施工〉リノベる。
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・住人データ
南雲さんご家族
賢一さん(34歳) フィギュア原型製作
薫さん(28歳) フィギュア原型製作
「近所に住む両親や兄弟姉妹、親族が一堂に集まることができる家にしたかったんです」
と話すのは南雲賢一さん。奥さまの薫さんとの結婚をきっかけに、新居として中古マンションを購入してリノベーションをすることにした。そして、雑誌で見つけた「リノベる。」に設計を依頼。将来の子ども室、客室としての和室などは面積を最小限に抑え、LDKをできるだけ広くつくることを希望した。
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左/LDKと廊下を仕切るドアはアンティークテイストに造作。ガラスで抜けと採光をキープ。
右/寝室から連続した空間に設けたウォークインクローゼット。夫婦の衣類をまとめて収納。
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左/シンク下に設置した食洗機は既存のキッチンに附属のものを流用。
右/ダイニングテーブルは家具ショップ「アーケストラ」で造作。
「キッチンの隣にある寝室には室内開口を設け、ブラインドで仕切れるようにして圧迫感を軽減。玄関から廊下を広く取り、ドアの一部にガラスを使ってつながりをもたせ、より広がりを感じさせる空間としています。また、壁の角にも丸みを持たせ、やわらかく全体がつながる家をめざしました」
と、話すのは設計者の寺崎卓朗さん。シンク側のキッチンは表面をモルタルで仕上げ、ダメージ加工を施した木と鉄脚のテーブルを組み合わせたアイランドタイプ。人が立てる十分なスペースをとり、壁側にコンロと作業台を設けている。作業台の下には、引出し式の収納を全面に造作。キッチンツールや食器の取り出しやすさと、すっきりとしたデザインにこだわり、グリルやビルトインのオーブンなども省略した。
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シンク側はベースを木で造作し、表面をモルタルで仕上げた。リビング側にはカウンターを設置。
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壁側の収納は引出し式。片手で開閉できるソフトクローズのレールを採用。
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テーブルの天板、壁側のカウンターは、ダメージ加工の木材を使用。
「姉妹や母、伯母も一緒になって女性が5~6人でわいわいとキッチンに立つことが多いんです。だからコンロとシンクが分かれていて、できるだけ余裕のあるキッチンが希望でした。身長が低いので吊り戸棚は使い辛い。私には引出し収納のほうが使いやすくて便利です」(薫さん)
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左/薫さんの身長に合わせて、シンク、コンロともに85cmの高さに揃えて使いやすく。
右コンロの左側の壁にIKEAのキッチンツールを吊るして収納。すぐに手に取れて便利。
キッチンの壁は白いタイル。シンク側に3つ並べた琺瑯の照明と合わさり、カフェ風の印象となっている。また、パイプハンガーやピクチャーレール用のワイヤーを設置し、雑多になりがちなキッチン小物を吊るするなど、細かな収納にも配慮した。
「寝室の開口は苦肉の策でしたが、暮らしてみると寝室が個室である必要性は感じず、普段は開けて全体をLDKのように使っていることが多いです」(賢一さん)
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左/「アーケストラ」で造作しポールを天井からワイヤーで吊るした。
右/キッチンの壁につくり付けた棚。よく使う調味料や鍋が並ぶ。
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玄関近くにある2つの個室。和室は黒の畳と薄緑の壁で落ち着いた印象。趣味室の壁は鮮やかな青で仕上げた。
限られた空間で、必要な個室を確保しながら、LDKをいかに広く使うか。室内開口やブラインドを利用し、寝室とキッチンを上手く調和させたこのプラン。家に人が集まることが多いファミリーの家づくりに、大きなヒントをもたらしそうだ。
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モルタルのキッチンを中心としたLDK。リビング側にはカリモクのソファ、ハンモックなどを設け、カフェのようなくつろぎの空間に。壁際にはテレビやターンテーブルなどが並ぶ。
〈物件名〉南雲邸〈所在地〉東京都江戸川区〈居住者家族構成〉夫婦〈建物規模〉地上5階建て(5階部分)〈主要構造〉鉄筋コンクリート造〈建物竣工年〉1986年〈専有面積〉73.28㎡〈バルコニー面積〉8.26㎡〈設計・施工〉寺崎卓朗/リノベる。〈設計期間〉3ヶ月〈工事期間〉3ヶ月〈竣工〉2012年
renoveru
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リノベる。中古マンション探し・リノベーション・専用ローンの3ステップでリノベーションをサポートする「リノベる。」を全国で展開。写真は設計を担当した寺崎卓朗 。
東京都渋谷区千駄ヶ谷2-9-6BARBIZON3 201号
TEL 03・5770・4324/FAX 03・5770・4322
www.renoveru.jp
※この記事はLiVES Vol.70に掲載されたものを転載しています。
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