2016年に目黒区で竣工した住宅です。敷地は住宅街の中の傾斜地にあり、北側には大きな桜の木を中心に、四季それぞれに豊かな表情をもつ林があります。
建物のテーマの一つは、傾斜地の眺望と緑を建物の内部に取り込み、居心地のいい雰囲気 l’air をつくり出すことでした。
傾斜した敷地の地下に擁壁と一体化したRC造のガレージを設け、その上に片流れの屋根を持つ木造の3階建の建物がのります。1階は子供部屋や寝室などプライベートな空間とし、2階にダイニングキッチンやリビングなどの家族の共有空間を配置しました。2階は屋根に沿った勾配天井の下で一つの大きな空間となっており、床の段差によってリビングとダイニングは分節されています。北面の横長窓によって切り取られた隣地側の豊かな緑と、南西側のガーデニングエリアの植栽が、季節によって変化し、家族の生活の背景となります。吹抜を介して2階とつながる3階のゲストルームからはルーフテラスへ出ることができます。ルーフテラスはアルミ製のルーバーに囲われていて、ルーバーに設けた扉を開くと空と街を見渡すことができます。
この建物のもう一つのテーマは、空気 l’air の計画でした。施主が壁掛型のルームエアコンの風を不快に感じるという話をきっかけに、快適な室内環境をなるべく少ないエネルギーで実現することを考えました。
・断熱
建物の断熱性を上げることは、空調された空気の熱のロスを減らし、空調に使うエネルギーを少なくします。間柱の間に断熱材を充填している一般的な断熱層の室内側に、さらに一層の断熱を加える(付加断熱)ことで、断熱層を厚くするとともに熱橋(外部に対して熱の伝わる箇所)を小さくしています。開口部に関しては、主な開口面を南面として西側の開口は最小限としました。サッシ自体もアルミと樹脂の複合サッシとすることで断熱性の高いものとしています。
・気密
断熱性をいくら高くしても、気密性が保たれていないとその省エネ効果は限定的なものになってしまいます。気密シートで家全体をすっぽりと覆うシート気密工法により相当隙間面積 C値 = 0.4㎠ / ㎡ を実現しています。
(現在の基準で高気密住宅とされている C値 = 1.0 ㎠ / ㎡)
・空調/換気
給気も排気も送風機を利用する第1種換気とすることで、室内が正圧にも負圧にもならない計画的で適切な換気を行います。また、全熱交換器により排気の熱を 回収して省エネ効果を高め、水蒸気も回収して過剰乾燥を抑えています。熱交換器と天井埋め込みの空調機をダクトで直結し、熱交換された空気を空調すること でより効率的なエネルギー利用を実現しています。ガデリウス・インダストリーの全熱交換器を採用しました