1100万円で建設できますか?との問い合わせからスタートしたローコスト住宅への挑戦プロジェクト。30代前半のご夫婦のための住宅。シンプルでコンパクトな家、広さではない空間の豊かさを求められた。
敷地はかつて織田信長が築城した安土城の城下、旧市街の街道沿いの角地に位置する。8m×19m、約50坪弱の長方形である。西、南の2面に面する道路は幅員も4m、3.3mと決して広くないが交通量が多く、北面にはアパートが立っている事からも周囲の視線が気にならない造りを希望された。
外部との最適な関係と建ち方に注意し、敷地を最大限有効に使用することを考えた結果、3つの切妻屋根が特徴的な平屋の空間を設計した。
平面計画は水回り、個室、LDKを敷地の短辺方向に短冊上に配置し、中廊下によってつながる構成とした。断面計画は水回り、個室、LDK、3つの空間それぞれに切妻屋根を持ち、各ハイサイドから光と風を取り込むよう平天井部を挟む構成とした。防犯やプライバシーを考慮して周囲には必要な個所のみ最適なサイズの開口部を配した閉じた構成ではあるものの、ハイサイド窓からの光で常に室内は明るく気持ちのよい空間を実現した。
3つの三角屋根は軒と勾配は同じであるが、内部の機能に合わせて幅が広くなり、高さを持つ。水回りは3.5m、個室は4m、LDKは4.5mの天井高で開放的な内部空間を獲得した。
洗面スペースは3.5mの木製カウンターにシンプルな洗面、機能的なミラー収納、モザイクタイルの壁面が特徴のシンプルな空間。浴室は最小限の要素によるFRP防水仕上げの白い空間。外部からは見えない中庭空間に開放的な開口を持ち露天気分を味わえる。トイレは奥様のご希望でオレンジの壁面とした特徴的な空間。寝室、個室は最小限の面積であるものの天井高さにより広がりを感じられる。玄関、廊下はハイサイド窓からの光溢れる空間。LDKは天井高さの変化に合わせてキッチン、ワークスペースを配置し、南面への中庭と一体感のあるダイニングスペースを中心に配置した。中庭は室内から一体的なタイル貼りのテラスがあり、道路側の木塀によって緩やかに閉じたカフェテラス空間になる。
徹底して無駄を削除した設計、様々な工夫の積み重ねにより、ローコストを感じさせない自然を味方にした豊かな住空間が実現した。
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