美容室を併設した住宅です。
土地区画整理中につき周囲の景観変化が予測困難な駅前の敷地において、オーナーが望む「髪の病院のような美容室らしくない隠れ家的な美容室」と「オーナー家族の住まい」のプライバシーをいかに守るか?が主なテーマとなりました。
検討の結果、7つの個の空間(=巣)を内包する4本の塔を、視線の多い道路沿いに敢えて並べ、その他の共有空間をその背後に配置する現案に至りました。
4本の塔は、その重厚な外皮により内部の個の空間に静をもたらし、自身が砦となることで背後の共有空間には適度なブラインド効果をもたらします。島を守るが如く立ち並ぶモアイ像のような列塔のファサードは、周囲の視線や騒音を遮り、塔と塔との隙間部分で光や風や景色を適度にフィルタリングするバッファー(緩衝装置)のような存在です。
区画整理により、数年後には辺り一帯が新築の建物で埋め尽くされる予定です。この「新築だらけの街」の異様な光景に一石を投じたい。ここで目指したのは、周囲の建物とは異なる時間軸をもつ、遺跡のような年齢不詳の建築です。
地産の砂利を大量混入したオリジナルモルタルを大胆に掻き落とした壁は、荒々しくも素朴な表情をもち、光のあたり方次第で目まぐるしく色味が変貌します。職人の手仕事の跡を敢えて残した左官壁は、新建材ばかりで構成された無機質な街並の中で、よい意味で新築らしくない独特な風合いと温もりを醸し出しています。
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