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【特集】ぼくらが小屋をつくる理由
2016年11月16日

人同士の繋がり、街のコミュニティをつくるきっかけになる小屋「スケルトンハット」(エンジョイワークスの小屋)

ぼくらが小屋をつくる理由

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(写真提供:エンジョイワークス)

鎌倉周辺で設計や不動産紹介、店舗プロデュースなどを手がけるエンジョイワークス。同社がYADOKARIと企画し、2015年より販売している小屋が「スケルトンハット」です。そこで今回は、「スケルトンハット」開発の狙い、特徴やビジョンなどをエンジョイワークス事業企画部 濱口智明さんに伺いました。

人の繋がりをつくる小屋

エンジョイワークスが鎌倉に移転したのは2011年。東京から離れていながらあえて住居に選ばれる土地柄は、暮らしや住居に意識の高い層が多く、同社の提案や商品の意図も届きやすいと考えてのことでした。

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エンジョイワークス事業企画部 濱口智明さん

創業時から原動力になってきたのは、人を繫ぎ街やコミュニティをつくりたいという思いでした。当初は不動産や設計業務が中心でしたが、コミュニティづくりの実現にはまず土地や建物が足がかりになりやすかったからなんですね。ですから設計においても僕らの作品ではなくお施主さんを主体としたり、地元の人々を巻き込むものにしたいという考えでやってきました

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HOUSE YUIGAHAMAはエンジョイワークスがリノベーションを手がけたショールーム兼カフェ。建築・インテリア関連の蔵書や建材・部材のサンプルを見ることができる。写真(下)は店内の床。

移転後、カフェやシェアオフィスなどのプロデュース業を開始。街のなかの関係づくりのあり方を考える中でターニングポイントになったのが、2015年の葉山芸術祭でした。当時は鎌倉のコミュニティづくり街づくりに関わりはじめていましたが、ゆくゆくは2拠点居住などの働き方や暮らしの変化に沿った住まい方を広く提案したいという思いから、全国規模で展開するYADOKARIとのコラボレーションを実施したといいます。それが小屋部(Webマガジン「未来住まい方会議」を応援するYADOKARIサポーターズグループ内で発足した小屋をつくる部活)部長の唐品知浩氏との企画であり、空き地に小屋を建て小商いを行う「葉山小屋ヴィレッジ」でした。

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葉山小屋ヴィレッジの様子(写真提供:エンジョイワークス)

小屋に興味を持つ人が全国から集まり、そこで再び新たなコミュニティや仕事が生まれていく。その光景を見て小屋の威力を実感したんです。元々弊社には『スケルトンハウス』という商品がありましたが、そのコンセプトが小屋にも応用できそうだという話から、YADOKARIのさわださん、ウエスギさんたちとのちに『スケルトンハット』となる小屋の企画を始めました

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YADOKARIのさわだいっせいさんとウエスギセイタさん(撮影:荒川 慎一)

「スケルトンハウス」の仕組みを活かして

ちなみに「スケルトンハウス」とは、躯体や基礎、壁などの外回り(スケルトン)と、住む人が主体的に、自由に考えられる内装や設備(インフィル)からなる戸建の新築商品です。コンセプトは「ライフスタイルに沿った家づくりを主体的に考える住宅」。間取りや窓位置、採光、照明計画から仕上げまで、施主が『家づくりノート』を通してアイデアを出しそこに同社が助言を加えてつくりあげる仕組みが特徴です。

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スケルトンハットLサイズは一棟で生活もできるサイズ感。

スケルトンハウスは三間間口(5.46m)を基本に奥行きを広げ、一般的な住宅サイズとしては合理的な構造・構法を採用しています。一方、『スケルトンハット』はスケルトンハウスよりさらに小さい、一般的な住宅サイズより小さい家の選択肢としての位置づけです。面積が小さいので、ライフスタイルを家に反映する思考やDIYもより身近になるんです

SとLサイズがあり、Sは母屋に追加する部屋、あるいは屋台のような軽やかな建物、一方のLは一棟で十分に生活ができるだけのギリギリの広さを確保した2階建てです。Sにはただの物置きではなく、仲間と建てる作業を通して人同士の繋がりをつくる鎹(かすがい)という要素も重視しました。

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SLともに窓の大きさやサイズ、位置は相談して決めることができる。写真はS(写真提供:エンジョイワークス)

Sはすべてキット化されている点が特徴です。大人が3人いれば一日で好きな場所に建てることができるので、ちょっと本格的なDIYに挑戦したい方なら充分達成感を味わってもらえると思います。外枠ができれば1人で少しずつカスタマイズする楽しみもできますしね。Lはしっかりとした仕様が特徴です。躯体には金物工法、窓には断熱性や熱反射性に飛んだLow-E複層ガラスを採用しています。施工はプロが行い、インフィルは完全仕上げ、水周りや設備のみ設置、スケルトン状態の3種類から選ぶことができます

インフィルの可変性や間取りの自由度は、RC造マンションのリノベーション文化を木造戸建に応用した結果なのだとか。実際に、スケルトンハットができたことで、エンジョイワークスの家づくりのテーマである「自由なカスタマイズ」も理解してもらいやすくなったそうです。

住まい方の選択肢を広げるために

同社はつねに、住みたい場所や暮らし方から「自分がどんな生活をしたいか」と考える上での選択肢を広げたいと考えています。だから新築もリノベーションも小屋も、理想の暮らしを実現するための方法として同価値に見ています。

ただ小屋はどうしても坪単価はあがる傾向があるゆえに、価格や展開上の苦労は多いのだとか。たとえば資材と価格のバランス。戸建商品の仕様を踏襲しているため、一般的な小屋商品と比較するとどうしても価格が高めになります。しかし同社では仕様のグレードを下げることは考えず、あくまで住環境や信頼性を維持することにこだわっています。さらにLの場合は、全国展開するにはクオリティを保った提携工務店の発掘も必要です。加えて需要が拡大した際には、各地の気候に沿った仕様も考えなくてはなりません。

その辺はまだこれからの作業ですが、全国にネットワークを広げることは前向きに考えています。小屋に興味を持ってくださる工務店さんならきっと新しいものに挑戦しようという感覚があるでしょうし、将来の商品開発や協業を一緒に行いたい方々になるはずですから

新たな暮らしとコミュニティのためのサイズと機能

Lは、利用者として離れやお店など母屋と違う生活を送りたい人や2拠点居住者などを想定しています。価格も考えると、ある程度余裕のある50代前後の方に比較的フィットしやすいのでは、と濱口さん。また複数人でシェアする形であれば30〜40代でも車を買う感覚で購入できるため、シェア別荘としてなど面白い使い方もできそうだと提案しています。

逆にSは、趣味小屋や書斎など母屋の補足として楽しんでいただきたいです。地域のグループやコミュニティの共有倉庫兼休憩場所などもオススメです。実はSを森などに複数配置してつくるVillage Hotelの計画もあるんです。小屋はオーナー制度にしてインテリアのカスタマイズもお願いし、人気ランキングを出すなど費用回収の仕組みも含めた事業ができればと。今は投資家の方も自分が楽しめることや誰かに役立つよう投資したいという傾向が強まりつつあるので、こういうアイデアは合致しやすいのではないかと思うんです。寝泊まりだけの小屋というのも、逆に言えば地域の施設や食を積極的に楽しむことになり、街の活性化や経済的な自立にも繋がります。小屋を基点にした地域活性の仕組みを成功させ、将来的には各地域へと展開していきたいですね

別荘のオーナー制度なども増えている今、既存建築のオーナー制度はトレンドにもなりそう。その対象が小屋である時点で、同社の計画はさらに先を見ていると言えるでしょう。

そして最後は、小屋が街の一部となることで暮らしや人々の考え方がどう変化していくかについて伺いました。

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たとえば葉山芸術祭って、地元民がクリエーターであり、かつお客さんとしても楽しむコミュニティイベントなんですよね。それと同じで、家づくりも施主さんに主体的に動いてもらうことが大事です。最近は鎌倉で事業を興したい人や地元民が集まって話し合う場「サンセットミーティング」も頻繁に行っているんですが、Village Hotelの計画でもなんでも、こちらは人を巻き込むことが欠かせません。私たちが中心になって動くもの、人を巻き込むプロジェクトと形はさまざまですが、そのツールのひとつとして小屋が選ばれるといいのかなと思います

新しいことをやりたいと考える人々に適したツールに「スケルトンハット」が定着するのもそう遠い未来ではないのかもしれません。今後どのような形で柔軟な暮らし方や住まい方を提案していくのでしょう。彼らの動向に注目したいと思います。

Text 木村早苗
Photo KEICO PHOTOGRAPHY

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