博士課程在学中に起業した30代前半のIT起業家と,この「環境の学び舎(IT本社+知己貢献型シェアハウス)」の企画からスタートし,土地と銀行探しを共に分かち合いました.実現にこぎつけたプロセスを通して,今では地域と街づくりにとって価値ある存在(場所)となっています.もちろん施主である起業家も,地元のさまざまな活動をリードする地域になくてはならない存在として,大きく成長を遂げています.
敷地は太平洋を望む崖の上.こんなにゆったりとした爽やかな敷地には,なかなか巡り会えません.だから「このロケーションと建築を解く鎹とは?」を探すことが最初のミッションになりました.ITオフィスであり,地域貢献活動の拠点でもあるここを訪れる多くの人たち,シェアハウスに一緒に住まう全員に,何かしらここでフレッシュで価値ある体験をして欲しい,その器として相応しいものは何か?
それを現実するため,この気候風土と建築デザインの可能性をまっさらな状態からカタチにする道筋を探しました.それが,大学生のみんなとの段階ごとの設計ワークショップであり,季節風をモデリングに組む込むことであり,風車のような屋根並みになりました.素材もできるだけシンプルな素材感を活かして,内外とも天然の杉板壁として,力強い表現にしました.
・稼働の長い400㎡超のITオフィスとシェアハウスのため,ZEB(経産省のネットゼロエネルギー実証事業)を申請して,最新の省エネ設計にしました.
・太平洋沿いの崖上にあるため,風の3次元シュミレーションを行い「自然な通風」に最適な3つの棟の配置とし,各所にリモコン通風窓を設置.本当に中間期や夏は'みんなのリビング'に風が流れ,涼しく感じます.冬は寒さ厳しい北関東なので,土間コンクリートの蓄熱床暖房で足元からふんわり暖かくしました.
・IT本社オフィスとシェアハウス事業(16室)をゆるく繋ぎつつ,イベントの際も,入居者にとってのくつろぎの時間でも,ヒューマンスケールで落ち着く居場所を様々なところにつくり「訪れるみんなにとって居心地のいい,大きな環境の学び館」として構想しました.
・第1の要望が「省エネ建築」であることでした.そこで,設備だけに頼るのではなく,井戸水による南西壁面へのミスト散布や軒の出,海風の最適な通風経路など「そこにあるエネルギー」を賢く「総合的に活かす」ことを心がけました.
・ITオフィスとシェアハウスが快適であることと同時に,将来の拡張性が担保されていることも大事なポイントでした.敷地に対して中央に建物を配すことで風を通しつつ,その周囲をゆったりとした緑豊かなニワとして,それに駐車場や菜園,将来コンテナなどで拡張できる余地を残しました.
・シェアハウスの設計プロセスで,近隣の大学である茨城キリスト大学の街づくりサークルHEMHEMのメンバーと何度かワークショップを行ったことです.竣工間際には,職人さんとの植栽,家具組立てや岩手栗の無垢フローリング材に蜜蝋ワックスを塗るなどのさまざまなワークショップを行いました.
・初めてのZEB申請で,事務局側も「風のシュミレーションによる通風設備」や「シェアハウスのエネルギー計算を何の用途にするか?」「緑地(植栽)は経産省管轄外でアウト」など,初めてのハードルをいろいろ一緒に越えて実現できました.
・敷地の魅力とのマッチングが大事だと思います.敷地を活かした良い設計の家は,'自分たちだけのかけがえのない宝物のような時間'を人生に提供してくれると思います.
・住宅では,ZEH(経産省・ネットゼロエネルギーハウス実証事業)の活用もあると思います.まずは設計以前の予習が大事です.ただ最新の設備を導入すればいいわけではありませんが,本格的な設計が走り始める前に,幅広い選択肢から,自身のライフスタイルに対する「家」というイメージを早めに相談するといいと思います.
「ブーメラン型の3つの風車」
オフィス棟,海棟,山棟の3つのブーメラン型をくるくる回し,海風が通るような配置を探しだしたから.上空から見ると,それが一目瞭然です.
茨城キリスト大学の街づくりサークルHEMHEM
三秀建設の皆さん
構造家の佐藤淳さん
コモド設備設計の皆さん
蓄熱床暖房のモアさん
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