人の気配が残る狭い路地、分刻みで電車が行き交う鉄道高架、新たに作られる幅員20mの都市計画道路。
敷地は異なる三つの環境に挟まれた特異な場所に位置している。
町の中で長い間静かに取り残されていたこの場所が、突如ヘタ地として削り取られ、放り出されたかのような独特の開放感がそこには漂っていた。その異なるスケールや距離感、速度、音、明るさといったものに反応しながら、環境と共に立ち上がっていく建築がこの場所には合っているように感じられた。
積層されたスラブを繋ぎ、内外を練り上げるように、敷地全体を大きく階段が廻っていく。人の動きを導き、人の気配を定着させるそれは、生活に寄り添いつつも、どこか人から離れた環境の骨格のような側面が顕れている。袋小路の路地を歩いていくと、その延長として階段が浮き上がり、高架をかすめるように建築にもぐり込んでいく。動きを持った階段は空間にスケールの強弱を与え、そこに連続した居場所がつくられていく。
それがこの場所に生きる嗅覚を刺激し、場所の発見を促していく。こうしてこの場所特有の豊かな環境が作られることを期待している。
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