編み物をするときの、棒針の動きを想像してみよう。
まるで身体の一部となったその棒針は、糸を引っ掛けて、掬い上げ、捻って、次々と糸を通してゆく。
この住宅は、その「編む」という仕草にインスピレーションを得ている。人の動線や人との関係を、糸が編まれる動きに見立てて建築化した。上下でクロスする動線、円を描く水平動線、螺旋状に上る垂直動線など、編み込まれた動線によって立ち上がった空間は、躍動感を纏う。
しかしそもそもなぜ「編む」がコンセプトになったのか。
それは建主と初めての面談で聞いた「我が家に布をテーマにしたスタジオを併設したい」という夢に始まる。大好きなテキスタイルの展示会、子どもたちを招いたワークショップ、地元作家と連携したスタジオ。そうして語られた夢を、我々はそのままカタチにしたいと思った。
だからこの家には、建築空間ばかりでなく、建主の夢までもが丸ごと編み込まれている。人々がこの家に集い、知人と語り合い、友人との関わりが生まれ、親友との絆が育まれる。この住宅はそんな出来事を編み込む優しい器なのである。
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