【谷中の小さな複合施設】
台東区谷中に特有の狭い路地からさらに入った袋小路に建つ築45年の木造住宅のリノベーションです。もともと住宅として建てられた建物が飲食店として改修されていた建物で、オーナーが変わり新たなプログラムで再生されました。
アーティストであるクライアントからこの場所に求められた機能は、ご自身のアトリエ、ギャラリー(レンタル、ご自身の作品展示など)、イベントスペース(寄席、映像上映など)、教室(アート、着付け、料理など)、カフェなど多様で、さらに離ればなれで暮らしている家族の1人がここに住み、家族が集まる「実家」のような場所としても期待されていました。谷中の街を凝縮したような多様なプログラムを小さな建築にもり込んだ建築になりました。
外観は薄いグレーピンクで塗り替え、天気や季節によって白く見えたり、ピンクに見えたりと見え方が変化します。ファサードにはカーテンをめくったようにワイヤーを張り、緑のカーテンをつけることで、周辺の住宅とギャラリーの間に適度な距離をつくっています。
【挿入された三角形の庭により段階的にまちに開く】
2階に三角形の外部空間(草屋根)を挿入し、内部空間を分節することで、住宅からギャラリーまで段階的にまちに開けるようにしました。斜めに挿入された三角形の小さな庭によって、1階のギャラリーの天井を高くし、吹抜けを介して柔らかな光が1階奥へ広がります。吹抜け越しに住宅スペースとギャラリーが交わり、互いの気配が感じられます。家族やお客さんが集まる2階のダイニングキッチン(カフェ)からは自然な目線で常に緑が楽しめます。
【立体的に変化するギャラリー空間】
緑のカーテンをくぐり、エントランスを入ると小さな畳のスペースが出迎えます。1段上がったこあがりはお客さんと腰かけておしゃべりしたり、展示スペースや着付け教室となります。
こあがりの奥は、床は数段下がり、天井は徐々に高くなり、上部から柔らかい光の落ちる展示スペースがひろがります。
【多様な小空間】
白とグレーのニュートラルなギャラリー空間と対照的に、個室や水廻り、こあがりや窓辺のベンチなどの小さな空間は異なる素材や色で仕上げた個性ある空間とし、それぞれの空間で過ごす楽しみを創出します。
施工:栄建
構造設計:正木構造研究所