敷地は緑豊かな山麓にあり、周囲は建物も少なく山の稜線が美しい場所である。
ここに美容室を営みながら暮らす店舗併用住宅を、というのが建主の希望だった。その豊かな自然環境の中に一つの大きな建築物をおくことは相応しくないと思い、細分化した箱型ヴォリュームをランダムに配置する集合体としてのあり方を考えた。そこでプライバシー性の高いボックス内にそれぞれの機能を入れ込み、各ボックスの間隙を共有スペースとしている。具体的には店舗部分は受付及び待合い、住居部分は1階にリビング、2階にダイニングである。これら共有スペースは各ボックスを繋ぐだけでなく、店舗と住居、さらには1階をパブリック空間、2階をプライベート空間として緩やかに棲み分けながら連続させている。そして間隙からなる共有スペースは外部に向かって視線を開放し、緑豊かな景観を取り込むとともに外部空間とリンクする。これらは店舗と住宅を隔てるのではなく対等に扱う店舗併用住宅のひとつのあり方となり得たのではないだろうか。
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