産婦人科の診療所であるこの建物は,都内の環状8号線に蔓してあり,道路を跨ぐ歩道橋が蔽い被さるように敷地に隣接している。
建物は厚いコンクリ-トによる半円筒シリンダ-状の抽象的な力強い表現とした。地下の診療室と待合室にはシリンダ-を取り巻くトップライトから太陽光が射込み,落ち着きある明るい空間が生まれ,住居である2・3階の中心には中庭が設けられ,主要な諸室に柔らかい光が届けられる。さらに,円筒シリンダ-の外壁に規則的に点在するガラスブロックとスリットを帳して,ゆらぎある光と直線的な強い光が,太陽の動きとともに内部空間に絶えず新鮮な表情を与え続け,また中庭のプリズムガラスを帳した光が階下のホ-ルに水蔓下のような穏やかな環境を生み出す。騒音と振動・排気ガス等による劣悪な外部環境に対して,日々移り変わる太陽光の力により,内部空間をその呪縛から解き放ち,それぞれの場に適応した感性豊かな空間へと変換する建物を生み出すことを計画の目標とした。
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