鳥取県米子市 大山の麓の森の中に計画したゲストハウスである。
敷地は桜と松の木立の中。それらの木々は、空に向かい立ち上がる幹と生い茂る枝葉を持って独自のバランスによる間隔を保持している。その姿は美しい。木々こそがこの場の正当な住人である。この場所に建物を造るということは、敷地との十分な対話が必要不可欠であり、その先に共生があると考えられた。それに則って配置計画は進められている。既存の樹木を出来るだけ残して建物を配し、その隙間に可能な限りの生活スペースを確保することを熟考。「森と共生するかたち」をデザインの要とした。その上で居住空間を建設できる区画を綿密に調査・分析し、短い連絡路によって各機能スペースを連結する方法を選択した。屋根には、樹木の枝の開きと方向に従ってそれぞれに向きを変えた勾配をつけ、効果的な太陽光の取込みに配慮している。
ここ大山では、冬場は2メートル近くの積雪がある。そのため居住スペースは2階部分とし、ピロティー建築を選択。更に夏場の風通しを考慮し、地面からの湿度と温度から室内環境を守れるよう配慮した。これにより、四季を通じて快適性に富んだ住まいが実現した。
各居室から眺める森はどこまでも深い。「明(アカ)顕(シロ)漠(アヲ)暗(クロ)」~一日色と言うらしい。移りゆく季節が描く一日色はどれ程多彩なのであろう。森が刻む豊かな時の流れを、この建物で過ごすことで感じていただけたら幸せに思う。そしていつか遠い未来にこの建物がその命を終えても、この森は生き続ける。「森と共生するかたち」は、この時にこそ本来の意味を全うできるものと考える。
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