建物が建つのは、敷地面積60㎡足らず、法的な条件も厳しく、東京の住宅街ならどこにでもあるような小さな敷地です。
法規によって大きな建物を建てることはできない一方、周囲の建物も同じように大きくすることが出来ないため、敷地周辺にはたくさんの「抜け」があります。そんな「抜け」を建物に取り込み、小さいながらも、家の内と外を明確に区別してしまうことのない伸びやかな住宅をつくりたいと考えました。
建物は、地下1階、地上2階、そして屋上という4層からなります。
以前から都会の住宅地で建物を計画する時には屋上を活用したいと考えていました。法規制の厳しい街区では、建物のサイズは多くの場合法律で決定されてしまい、結果、周辺を見渡すとどこも同じような高さの建物が建ち並ぶことになります。そこで、そんな特性を逆手に取り魅力的なものとするため、屋上は非常に有効な空間であると考えたわけです。この住宅でも、ウッドデッキが隆起したような屋上からは砧公園の緑や多摩川の花火、東京タワーまで見渡すことができ、その眺望や吹きぬける風は、住宅地にいながら自然や季節の移ろいを感じさせてくれます。
リビングとなる2階には少しスケールアウトしたくらい大きな両開き窓を設けました。窓を開け放つと、単に風や光を取り込むだけではなく、室内に外部空間を引き込んだような心地よさが生まれます。さらに、リビングと屋上は外階段を通じて直接つながっているので、リビングのソファで過ごしていると頭上にも地面があるような不思議な安心感、安定感を感じます。
また、通りや地盤面に近い1階や地下1階にいると、いつもなんとなく地面や土地、街のことを感じます。玄関があり住宅内外の中間的な雰囲気を持つ土間床の1階、ドライエリアを通して緩やかに外を感じる地下1階は、用途や使い方を限定することなく、暮らしの変化を柔軟に受け止めるおおらかな空間になっています。
小さな敷地に建つ小さな家ではあるが、それぞれの階や空間がそれぞれの振舞いを担うことで、住宅と街並み、内部と外部が無理なくつながるような住宅になるのではと考えました。
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