東急自由が丘駅近くに、美観商店街という戦後から続く歴史ある飲食店街がある。
この商店街には焼鳥屋さんが多くあるが、その中でも一番人気の店が「鳥へい」だ。
TV東京の「出没!アド街ック天国」でも紹介された店でもあるが、常連さんが足繁く通い、
地元に長く愛される焼鳥屋さんだ。
http://www.jiyugaoka.or.jp/special/adomachi/index4.html
この鳥へいの店舗建替えの設計を、有難いご縁で受けることになった。
この店は、駅北口改札から徒歩1分という場所がらもあり、敷地が非常に小さく、
木造2階建ての旧店舗でも全部で約40席程度の小さい店であった。
新店舗もこのキャパは変わらない。ただし商業地域・防火地域であることから
耐火建築物となり、木造ではデメリットがありすぎるため、鉄筋コンクリート(RC)造
で計画した。
2階建で延床面積50?、建築面積25?。狭小住宅ならぬ狭小店舗であり、
設計は基本計画から寸法との戦い(?苦笑)であり、実施設計からは、まさにミリ単位の
調整を要した。
鉄骨造という選択肢もあったが、狭あい道路街区に位置するため、鉄骨本体の建て方
工事に難があること、プラン的に柱の出が厨房器機や階段の幅を確保するのに邪魔な
ことなどの検討を経て、壁式RC造とした。
地盤が悪く、杭工事にも設計の段階から神経を使った。
道路境界以外の隣地はいずれも境界線ギリギリに建物が建っていた。
外部足場などのスペースを確保すると店舗内の必要な寸法が取れない。
そこで、コンクリートの型枠と化粧を兼ねて仮設用の鋼板(キーストンプレート)を利用した。
コンクリート硬化後の型枠を解体する手間を省き、かつ外壁の仕上げ工事を省く
一石二鳥の効果を狙った。隣地建物との一番狭い離れは30cmで、細身の職人一人が
どうにか入り込める幅で建てることに成功した。
この大変な狭小地の狭小建築工事は、高橋工務店という地場の老舗の建設会社が
請け負ってくれた。現場監督さんや大勢の職人さん、現場関係者の協力よって、ほぼ
工期通りに完成した。
この場を借りて、改めてその労いを感謝したい。
店主はこれまでの様に大勢のお客さんに来て欲しいので、建替え後もできれば料理
単価は据え置きたいと望んでいた。
それには常連のお客さんがこれまで以上に、この焼鳥屋を愛してくれることだろうと感じた。
品良く、親しみがあるファサードを構築し、居心地がよく、店もサービスもキャパが広く
感じる店舗を目指した。
自由が丘を代表する焼鳥屋になってくれることを念じて。
自由が丘・鳥へい
http://atelier24.jp/torihei/pro_tori.html
撮影: 吉見謙次郎(スタジオバウハウス)
http://www.studio-bauhaus.com/
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