住まいの計画地にはこれから生まれる建物の外部要素を補ってくれる「何か」が存在していることが多い。
それは海、山、池、河川などの自然や都市の風景であったり、近接する場所に生育する樹木や野鳥などの生き物、古い歴史的な建物など構造物であったりする。
そのような「何か」があると、コンセプトも建物のイメージも作りやすいのだが、この場所は計画がスタートする時点では周辺は更地のままで何も存在していなかった。
ただ、視界が開ける南東方向には遠景として、大阪市内の高層ビル群や生駒の山並みが遠くにかすむ。
イタリアの偉大な建築家 故「アルドロッシ」は「1つの建物が都市を変化させる力を持っている」と述べているが、そのような仰々しい建物でなくとも、この造成地に「新しい風景を作る楔」を打ち込むことは可能ではないだろうか。
そのような思いのもと、施主と供に考えながらこの住まいは出来上がっていった。