町の上をすべるように走る中央線に乗り、新宿から30分ほど離れると武蔵小金井に到着する。近くに小川が流れ、やわらかな風が抜けていく静かな住宅地にこの家は建っている。
穏やかな自然を日々感じながら、ゆっくりとできるだけ同じ時間を過ごしていきたい。若い4人の家族のそんな思いからこのプロジェクトは始まった。
そこで家族の暮らしに合わせて大きさの異なる5つの箱を敷地中央に並べ、周辺環境を読み込みながら、その奥行き3.9mの箱を丁寧にずらしていく事を試みた。するとそこに小庭が生まれ、朝陽が差し込み、涼しい風が抜け始める。そして同時に、建物内を横断していく大きなテーブルを基準として、箱を断面方向にもずらしていく。すると天板と床との距離から、大きなテーブルはキッチン台となり、食卓となり、座卓となり、机となり、椅子となる。
こうして住宅内、住宅外にはそれらを結ぶ様々な距離が生まれ、ここに地域と家族の暮らしがやわらかく編み込まれていく。5つの箱は大きなテーブルと連動する家具であり、自然と呼応する小屋である。ずらすという単純な操作によって、家具のスケールから自然環境というスケールまでが途切れる事なく繋がっていく。
こうしてできた木箱がこの地に深く根を下し、穏やかな自然と共に家族が楽しく暮らしていく事を期待している。
オーク構造設計
深澤工務店
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