その昔、人と人の関係は今よりずっと濃密で、住宅と住宅の境界がなんとなくはっきりしていなくて、建物と街の接点も曖昧であった。
もともとの露崎商店もそんな時代に建てられた。
築70年ほどの木造2階建ての露崎商店には迷路のような導線の中に小さなお店がたくさんあり、ひとつの商業施設として人々に愛されていた。
そんな中、昨今の世の中の動向を受け、立替計画を行うこととなった。
その昔とは違い、個が確立され、境界線が明確となり、経済効果が求めらえる今の時代に露崎商店は新しく生まれ変わった。
今までの露崎商店のあり方をひとつのキーワードとして、設計を進めた。
機能的に共用部を縦導線と絡め、できるだけコンパクトにしてレンタブル比を高める計画としたが、共用階段を前面道路側に配置することで、街路を建物内に引き込み、街と建物の接点を曖昧につなぎ、路地空間を形成した。
街路に面した軒下の空間は、かつての土間空間のような趣があり、人と関わることのできる場をもたらしている。
その土間的要素を持つ空間からEVで上がると、最上階にあるオーナー住戸へと続いていく。
平面的であったかつての露崎商店は立体的に繋がる建物へと生まれ変わった。
材料や構造こそ違うが、なんとなく懐かしい感のある下北沢に馴染む建物である。
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