四方を家に囲まれた旗竿地の住宅。
建て直す前は、家と家の距離が近いため、こちらも対面する家も、どちらも、窓を開けづらく、雨戸を閉め切った家もありました。そういう四周に開くことが難しい敷地に、快適な住宅を実現しようとしました。
44:63
44とは、この敷地に最大限可能な建築面積です。それに対して、63とは、建築基準法、民法、および施工上、この敷地で2階建てを建てるておきの、最大限の面積です。
建築面積44m2のまま立ち上げると、外壁に窓を設けざるを得ません。結局、窓はあるものの、日常的にはカーテンで締め切り、光や風もかなり制限されます。
この住宅では、最大限の面積63m2のボリュームを立ち上げ、建築面積44m2との差19m2を、3つの中庭としました。
外壁には窓はなく、中庭に、床から天井までの開口部を設けています。サッシュは、天井一杯の高さを持ち、法的には44m2ですが、中庭との一体感で、63m2の広がりを持つ住宅が生まれました。
中庭と空の導入
中庭は、もう一つの部屋です。光と風を取り入れ、夏には付属スペースとして利用できます。
短辺1.6m以上、長辺2.6m以上あるため、密集地の住宅の窓から隣家の外壁までの距離より長く、1階の光も、法律上の量の5倍以上を確保しています。外壁に窓のある住宅とは違い、隣家からの視線が入りにくい位置の窓のため、プライバシーを気にせず開け放し、光や風が入ります。
中庭は、空を天井仕上げとした部屋です。密集地の住宅では、室内から空がなかなか見えませんが、この住宅では、中庭がつくる引きにより、1階からも、空の実像が見えます。
ガラスに映る空の虚像や、反射性塗料で仕上げた室内の床と天井に映る空や風景が、広々とした感覚や季節や時間変化への感受性を高めます。
開くことと閉じること
外壁に窓を持たないこの住宅は、閉じた建築に見えるかもしれません。
実際には、外壁の足場が外れた時期から、プライバシーが干渉されないことを理解した周りに家が、少しずつ窓を開くようになりました。この家も、閉じた印象とは反対に、日中、窓を開け放すことができ、室内に、外の気配が入り込んで来ます。
そうやって、この家も、回りの家も、以前の、周りに閉じた状態から、外に開き始めています。この家がきっかけで、一郭が、緩やかに開き出すこと、これも、計画の際に、願っていたことです。
すべて外断熱、サッシュもペアガラスとなっています。
資料請求にあたっての注意事項