敷地は道路側から見ると南北に奥行があり、両隣は建物が建込んでおり、基本的には閉ざされた行き止まりのような環境であった。一方、敷地内から外を見ると、南面道路を境に広がる市街化調整区域による、大らかな視界と光があった。敷地と道路との若干の高低差も相まって、近景の田畑から遠景の伊予の山並みまでが、地続きに力強く繋がっているような感覚を覚えた。
このような敷地としての明確な方向性により、建築に内包すべき暮らしや光の在り様も非常にシンプルかつ明白に思えた。この敷地においては、建築の力で何かしら不利な状況を解決していくというより、この場所の持つ特性をどれだけ素直に取り入れることができるか、が肝であると考えた。
道路際の庭、アプローチの庭、リビングの庭により街と建築の繋がりにシークエンスを持たせること。光においても「明」から「暗」までの振れ幅を建築に内包させることで、遠景の山並みの明るさと人の暮らしに必要な光を緩やかに繋げることができればと考えた。
ある種、洞窟を思わせるような守られた場所に居ながら、遠くから届く光を享受し、街と繋がりながら、暮らしていく。そんな家族の受け皿となることを願っている。
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