与条件とデザインボキャブラリーの選択
江戸時代から続く「鰻 大和田」のひとつが柏駅前にある。新築されたワンルームマンションの1階に入ることとなった。交通の激しい国道沿いに位置しているため、まず客席部分の居住性を確保するバッファーゾーンの必要性が感じられた。次に、ワンルームマンションの煩雑な形態を取りまとめる設えが必要と思われた。更に、当然のことながら、飲食店舗として存在感のある表現が求められた。そして、オーナーからキーワード「オーソドックスだけど新しい!」が与えられた。これらの条件を踏まえ「格子」で店舗全体を覆うこととした。
格子の構成について
店舗全体を竪格子のみで構成すると、空間が単調となり、また、和風の印象が強くなり過ぎることから、竪格子と横格子を併せて用いることとした。また、竪格子は同じ横格子に較べ遮蔽性を強く感じることから、国道沿いに竪格子、側道沿いに横格子を配した。更に、店舗内部も格子で構成するものとし、スケール感に対応した細かな格子で竪・横を外部に合わせて配置した。「格子の重層」を空間表現のベースと設定した。また、内部格子の一部を可動とし、自由度の高い客席レイアウトを可能とした。テーブル脚部も格子の表現とし、空間構成に積極的に参加した。
素材の表現について
昔から「鰻はタレで食わせる」と言うが、「鰻白焼き」を食する機会を与えられ、考えを改めた。鰻をワサビ醤油またはワサビ・塩のみで頂くと、鰻それ自身でとても美味しいのに驚いた。食材の良さを建築材料の表現に置き換え、格子の「木-繊細で平滑」と壁の「櫛目の左官材-ブルータル」のみを強調した。それ以外の材料や設備類は「見せない表現」で徹底した。
空間について
「格子の重層」により、空間が、はたまた自分自身が浮遊しているように感じられる。格子の向こう側に垣間見える闇に吸い込まれそうな錯覚に陥る。煩雑な都市の中で、小さいけれど「特別な場所」がここにある。
2003年夏のオープン以来、本当に多くのお客様にご来店頂き、ミニコミ誌の「わがまちいい店大賞」に選出して頂きました。
http://www.lcomi.ne.jp/otoku/t/05iimise/kashiwa.html#top
受賞:第11回千葉県建築文化賞奨励賞受賞
雑誌等掲載:月刊「商店建築」2004年4月号(商店建築社)
「建築士」2004年7月号(社団法人 日本建築士連合会)
ショップデザインシリーズ「店舗ファサード&外装」(商店建築社)
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