人生の出発を育む建築空間
幼稚園の建築は、子どもにとって、人生の出発の空間である。ここで子どもは,初めて、多くの友だちと共に生活し、新しい遊びを体験し、様々なことを学び,そして、自分を発見していく。その時、子どもたちの内面には、生きることへの期待や歓びが、漲っていることであろう。同時に、幼稚園は、家から離れ、親から離れて生活する最初の場でもある。そこでは、不安や孤独、疎外感を感じることもあるであろう。この期待と不安という、相反する思いを、幼稚園の建築空間は受け止め、期待を育み、不安を癒さなければならない。不安が無くなることで,子どもたちの成長しようとする意欲が、十全に育まれることを考えると、この二つは、幼稚園建築に、無くてはならない二つの柱ではないだろうか。一つは、家の延長として、自分が守られているという、確かな「安らぎが感じられること、もう一つは、新しい世界と出会い、それを学び取っていこうと欲する心が、無限の「広がり」を感じ取れる場であること。この二つの大切なことを、一つの建築空間として構想する中から、この幼稚園建築は生まれた。
http://www.ne.jp/asahi/prime/nishijima/21.html
掲載誌
日経アーキテクチュア (2000年4月)
子どもの文化 (2000年5月)