建主家族、姉家族、父親の三世帯が集まって住む計画である。計画地は都心郊外で低層住宅の立ち並ぶ空が近く感じる立地で、父親と建主家族の住む洋風切妻屋根の家屋と父親の趣味の庭が広がるおおらかな土地であった。近所に住む姉家族も折に触れ訪れていたが、広々した土地の利活用もあり当地に三世帯が一緒に住む話となりその住まい方が模索された。
当初は既存家屋を解体し新しく1棟の三世帯住宅として計画していたが、思い出深い既存家屋の記憶を引き継ごうとなり、既存家屋+新築という計画に方向転換された。
1棟で計画していた時にも共通していたが、三世帯がどうあるべきか、また距離感をどう考えるかがポイントとなった。
三世帯の在り方として、庭が趣味である父親は庭との距離の近い既存家屋の1階に、在宅することの多い姉およびその家族は父親との距離の近い既存家屋の2階に、共働きの建主家族は新築家屋に居を構えることで落ち着いた。
距離感を調停する材料として、ここでは、庭を含む外部空間に着目した。父親の趣味の庭は面積こそ小さくなったが、新築家屋の配置を既存家屋とで庭に続くデッキテラスを囲い込むようにすることで庭と双方の建物との距離を縮めより積極的に生活に関わっていくことができるようになった。また、既存家屋の2階は姉家族のエリアだが、リフォームを施し、三世帯も集えるリビングも設けた。このリビングには新築家屋2階屋上に向けてバルコニーが張り出していた。このバルコニーと新築家屋屋上を階段状の大きなテラスとしてつなぎ1階のデッキテラスとも階段でアクセス可能にすることで、三世帯が内外を通じて立体的に行き来できる楽しい住まいとなった。
仕上に関しても父親夫婦がここに居を構えた当初の既存家屋のイメージを大切に継承しようとの思いから、素材や色を可能な限り近づけるように選択した。
これにより父親の庭づくりのモチベーションもあがり、庭の植栽や添景のみならず1階の内外を取り結ぶ拠点のデッキテラスも父親作となり、既存・新築建物と新しい庭を含めたランドスケープによる記憶がつながる一体感ある風景が立ち現れた。
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