敷地は、大きなひとつの敷地の中に母屋,農舎,蔵などの複数の建物を分棟で配置する屋敷構が解体され、土地は小さく分割され、
高密な住宅地へと更新が進む新潟市江南区亀田駅近くの旧農村集落内。
農村集落としての開発は比較的新しく1970年代。その後水路の位置や形の変更、道の位置や形の変更し、現在も町の区画形質を変更、更新をし続けている。
この敷地もまた、かつて田畑であったり、水路であったり、道であった履歴を持っている。
集落の道は狭く小さくても、かつては各屋敷の敷地内に生活を繋ぐ小道があり、その小道が生活や農作業のはみ出しを許容する緩衝スペースとなり、
そこを介して各屋敷は集落(町やご近所)へと繋がっていた。
現在、かつてあった敷地内の小道も区画分譲され、小さな住宅建設用地となり、
各家はなんら介することのできる緩衝スペースもなくダイレクトに狭く小さな道に接続せざるをえず、敷地周囲はぐるりと、かなり近い距離でご近所に囲まれてしまう。
そんな土地に夫婦と子供が暮らす住宅を計画しました。
設計に際して求められたことは、
キッチンから家の大体を把握できること。
風や陽が抜けること。
明るく開放的で遠くを見通せること。
という、生活の本質を決めるもの。
使い方の明確な機能室をコンパクトに配置した1Fに、風車のようなプランを採用したひとまわり大きな2Fを、少し軸を振り、のせた。
そこにLDKと柔軟な使い方に対応した子供室を配置し、風車の羽根が重なる箇所や下階とのズレに吹き抜けや木格子、大小のテラスを設けた。
そうした少し複雑な構成により生まれた隙間は風や光の抜ける道となりながら、
「町と家」「屋外と屋内」「遠くと近く」を繋ぐ緩衝スペースとなり、雪や雨、夏の日射や冬の北西風、そしてプライバシーを調節し生活を守る。
風車の中心には煙突状の空に抜ける北向きの天窓を設け、風車の羽根先で捕まえた気流をそこから抜き、
そして北の空を取り込み、家の隅々までに柔らかい光を運ぶ。
家の各所に設けられた床の起伏、天井高の変化、光の明暗は、空間に多様な拠り所をつくり、家の中を歩き、周り、
そしてその時々の居場所を選択するという行為を、より日常にそして身近にしてくれる。
こういった複数の要素を丁寧に重ねて計画していくことにより、
日々展開していくここでの生活や景色が、町と家、家と四季をより親密なものとする開放的な生活が、
高密な住宅地の中で実現できたように思います。
また、複雑な平面と断面の構成により生まれた、細かに分割され、色々な素材を与えられた立面。
それらの重なりが織りなす豊かな表情は、
かつての農村集落が持っていた、母屋・離れ・蔵・庭・道といった小さな部分の集合により作られていた景観を継承し、
現在の街並みに奥行きと多様性をもたらしている。
農村集落の大きな敷地の分割から生まれてしまう均一な街並み。そうした問題へのアプローチとして、
自然エネルギーの有効利用、排出CO2削減、エネルギー消費の高効率化はもちろんのこと、
それらを越えて、街並みの多様性を継承し、過去の文脈を未来につなぐ「持続可能な建ち方」を提案しています。
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