建築家と家づくり 好きに暮らそう SuMiKa
ぼくらが小屋をつくる理由
2015年 8月27日

なぜ今、小屋なのか?SuMiKaが仕掛けた「小屋フェス」トークイベントから考える、小屋がつくる未来

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2015年7月25日から8月2日の9日間にわたって、SuMiKaが長野県茅野市の尖石遺跡周辺で開催した、小屋を巡る夏フェス「小屋フェス」。
オープニングでは、「なぜ今、小屋なのか?」をテーマに、運営側であるSuMiKaのメンバーも参加してトークイベントを行いました。今回は、その模様をお届けします!

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右からSuMiKa石畠吉一、SuMiKa佐藤純一、YADOKARI小屋部部長・唐品知浩さん、greenz.jp代表・鈴木菜央さん

“小屋”の可能性って何だろう?

菜央さん

昨年10月には東京・虎ノ門で「小屋展示場」を、今回は長野・茅野市で「小屋フェス」を開催したわけですが、SuMiKaが“小屋”をテーマとする理由はどこにあるんですか?

佐藤

「小屋展示場」の前に、世界中の小さな家を紹介するライフスタイルメディア「未来住まい方会議 by YADOKARI」と共同で、5名限定で小屋をつくりたい施主さんを募集して、小屋制作費の一部(50万円)を負担します!というキャンペーンをやったんですが、かなりの反響があって、驚いたんです。そんなに小屋に興味があるのかと、少し半信半疑のところもありました。でも小屋展示場を開催してみると、7日間で計12000人の人が来場してくれて。

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石畠

“小屋”は話題性があると思っていたし、“小屋といえばSuMiKa”という位置づけを狙いたいなと(笑)。

佐藤

それもそうですが、今の社会に“小屋”、つまり小さな家、小さな暮らしを持ち込むことは意義深いこと、価値のあることですよね。

菜央さん

“小屋”って、想像力が一気に膨らみますよね。そこで何をしたいかを考えるのにちょうどいいサイズ感で。昨年に開催された「小屋展示場」に出展した小屋に、友人の美容師が入ったとき、自分がやりたい美容院のイメージが涌いたって言うんですよ。ここに鏡があって、こう光が差し込んで、次のお客さんが座れるところがあって、今髪を切っているお客さんと、次のお客さんと自分が楽しく話しながら…みたいな。

佐藤

想像できる空間の広さってありますよね。箱庭感覚みたいに、小屋って、そこでどう暮らすのかを想像しやすい広さ。

菜央さん

そうですね。小さいからひとつのことにしか使えない空間なんだけど、その分敷居がぐっと下がる。その美容師さんがすぐに「建てるのにいくらかかる?」「どうやって建てたの?」って聞いてくるわけですよ。イメージが膨らんで、それがまたすぐに現実のものになっていくって、すごく楽しいなって。

「小屋展示場」に小屋を出展させてもらったとき、小屋の中に入ると、自分の仕事のありかたとか生きかたとか、みんな考えちゃうんですよね。出てくる言葉がいちいち哲学的だったり、本質的だったりして、来場してくれた人と会話しているだけでも面白かった。可視化されていない、もしくはまだ言葉にはなっていないけど、そこに“小屋”がもつ可能性があるんじゃないかと思うんです。

創造的に共生しながら、小さく暮らす

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小屋フェスのゲート

菜央さん

そもそも家を建てるって、一生に一度あるかないかの大きなライフイベントですが、お財布との相談で、住みたい場所に住むことが難しかったり、こだわりがあっても建て売り住宅を選ぶことになったりと、“家”について、それほど選択肢のない時代が続いたと思うんです。

佐藤

そうですね。今回の「小屋フェス」は、長野県茅野市との共催なんですが、茅野市は、地域遺産である“縄文文化”を暮らしのなかに取り入れましょうという指針をつくっていて、「創造的に、共生しながら、小さく暮らす」とある。これはまさに小屋そのものじゃないかと思って。

小さい住居だからこそ外とのつながりは濃くなって、共生するというムードが強いと思うんですよ。創造的じゃないと暮らせない、共生的じゃないと暮らせないというところが、小屋のひとつの魅力じゃないかと。

菜央さん

なるほど、面白い。

佐藤

小屋フェス会場のすぐ近くに尖石縄文考古館がありますけど、縄文土器はもちろん、縄文人の衣服とか、すごくアーティスティックですよね。

唐品さん

現代の暮らしだと、シェアハウスって小屋に近いなと思っていて。自分のスペースはすごく小さくて、みんなで共用部をシェアする。これは縄文文化と同じような感覚で、どっちかというとそっちに戻っているんじゃないかなと。

菜央さん

グリーンズのインターンで、「敷金とか礼金って何ですか?払ったことないんですよね」って言う人がいて。持ち物は大きな鏡一枚で、あとはほぼシェア。洗濯機も冷蔵庫も買ったことがない。そういう新しいライフスタイルを平然とやってしまう人が今たくさんいるんですよね。

小屋は、自分の手でつくるもの

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唐品さん

YADOKARI小屋部では、みんなで小屋をつくっているんですが、持論でいうと、小屋はつくるものだと思っていて。ゼロから建てる、どんどん組み上がっていく感じがもの凄く楽しいんです。自分の手を動かして、その動かしたことがかたちになっていく楽しさを、みんな感じてくれて。今、YADOKARIサポーターズは1800人くらいいるんですが、プロジェクトをたてると、小屋をつくりたい人がその時に来るんです。

菜央さん

「小屋展示場」に出展した小屋は、出展する際と、いったん解体して自宅に建て直す際に、合わせて100人くらいが小屋づくりに参加しています。全員とゆっくり会話ができたわけではないけど、みんな笑顔で帰るんですね。この笑顔は何だろうって。家ってブラックボックスじゃないですか。どうつくられているのか、じつはよく分からない。それが小屋を一度建ててみると、床ってこうやって貼るんだ、壁ってこうやってつくるんだとか、ひとつひとつ腑に落ちていくんですね。もう1回つくれと言われたらできないけど、少なくとも家ってこうやって建つんだとか、こういうことなんだと分かっていく。

唐品さん

そうですね。「なんだこれでいいんだ」という感覚を持つことができて、家が“自分ごと”になっていく。この会場のメインステージは、番線という針金で木と木を結んでいるだけ。建て売り住宅やマンションを選択していたら手に入れることができない情報だけど、小屋をつくることで、知識の幅が広がっていく。個人的には子どもたちにもその幅の広さを知ってほしいなと思っているんです。

ライブ小屋ビルディングでは、小屋フェスの会場設営を行ったグランドライン(徳永青樹さん、藤原一世さん、長久保恭平さん、鷹見秀嗣さん、矢崎典明さん)とYADOKARI小屋部部長の唐品知浩さん、週末にはデザインユニットpointの長岡勉さんによって小屋づくりワークショップが行われました

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唐品さん

この間、空き地に小屋を建てることになって、スケボーのランプつき小屋をつくったんです。屋根がスケボーのランプになっていて、その下に入れるという小屋。神奈川県・葉山の子どもたちの遊び場になったけど、いずれ撤去するって言ったらみんな悲しそうで。そこでスケボーが上手くなった子もいたりする。何もなかった空き地に何かができることでコミュニティも生まれるし、子どもたちの遊びの場も生まれる。これって、すごい魅力だなと。

菜央さん

今って、お客さんでいることが求められる社会じゃないですか。お客さんでいることが、一番効率が良かったりする。検索して並べ直して、一番安いものを買う時代。その行き着いた先は、それぞれが孤立して忙しくて、お金を稼ぐために一生懸命働いて、友だちと遊ぶ時間もとれなかったり、周りとつながる時間もとれないとか、地域の人の役に立ちたいけどどうしたらいいか分からない人ってたくさんいると思うんですよね。

遊び場が欲しかったら、じゃあ俺たちでつくろうと、自分から働きかけることができるかどうか。それが社会をつくっていくというか。小屋って、自分のものを自分でつくるってだけじゃなくて、空き地に何か遊べるものをつくることだってできるわけですよね。こういう自分でつくっちゃう新しいDIYカルチャーが、硬直化している社会に対して風穴を空けていると思うんですね。

小屋は、ビジネスのありかたも変えていく

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菜央さん

暮らしかたの範囲を広げていくという意味では、小屋だけが答えじゃないと思うし、小屋に住む、小屋をつかう、小屋をシェアする、小屋をつくるなど、いろんな選択肢、楽しみかたがありますね。

今どきのビジネス本では、パン屋さんを開業するには3000万円必要だという話なんですが、みんなで小屋を建てて、石釜をつくって、パン屋を開業するとなったら一気に開業資金が下がる。小屋は、そうやって新しい商売をやりやすくするツールでもあるなと。

佐藤

やりたくてもできなかったことを実現するのに、小屋は優れたツールですね。

唐品さん

YADOKARI小屋部の活動でいうと、建てている段階から、ファンができ始めている感じがあって。クラウドファンディングに近いんです。あそこで何か始まったぞって。その人が建てることに参加してくれたら、もっとファンになってくれる。そういう動きがもっと増えたらいいなと。

菜央さん

それから、北米を中心に、世界中でタイニーハウスをセルフビルドする人が急増したことによって、そこに小商いが生まれていますね。例えば、窓。今までの住宅とは違うサイズが小屋の窓には求められるので、新しいサッシのサイズをつくることに大手メーカーは追従できなくて、中小企業が小屋のサッシをつくっていたりするらしいんです。

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石畠

そうそう、本当にそうなんですよ。日本でも、特殊なサッシやガラスは長野や富山の中小企業がつくっていたりする。

菜央さん

ほかにも、タイニーハウスでもちゃんと断熱したいというニーズがあって、断熱材として羊毛をつかいたい人が多いけど、流通してないじゃないですか。だから、羊毛をタイニーハウスに供給する商売を始めた人がいて、これが当たったみたいなんですよ。この現象って面白いなって。

もちろん大手企業にとってもチャンスではあるんだけど、中小企業や個人の商売において、小屋って“希望”ですよね。タイニーハウスのビルダーもたくさんいて、設計する人もたくさんいる。マーケットができて成熟してきているから、面白いことになっているんですね。日本もそういう感じになっていくんじゃないかなと。

小屋がつくる、ほしい未来

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石畠

急激には変わらなくても、緩やかに小屋のマーケットが育っていくといいなと思っていて。みんなでひとつひとつ小屋をつくることで変わっていくと思うんです。まちの政策として“小屋特区”みたいなのをつくってくれるといいですね。

誰でも借りることができる借地で、3年間は月1万円くらい、そこで自由に小屋をつくって売ってOK。インフラは整っています、という広場を特区と呼んでくれるだけで、一気に変わっていくと思うんです。

佐藤

すぐにできそうですね。

菜央さん

なるほど。実験する個人がどんどん現れて、賛否両論があったりする中で、住まいかたについての法律を変えようという議論が起きて、それで変わっていく。そのためには挑戦する人たちも必要だし、緩やかに変えていこうと制度を整えてくれる人も必要。いろんな人が小屋に関わる場をつくることが大事ですね。

それに今、空き家率は全国で15%という話もありますが、畑や庭つきの住宅を維持できなくて、行き場を失った住まいってたくさんあるわけですね。そういう庭に小屋を4〜5つ建てて、母屋の水廻りだけみんなでお金を出し合って改装して使っていくとか、社会のあまっているリソースを活用して、もっとみんながハッピーになれるツールとして小屋ってあるんじゃないかなと。

佐藤

“小屋”が、新しい別荘スタイルというか延長線上で、レガシーなイメージじゃなくて新しい選択肢を提示できるといいですね。

菜央さん

真面目な話、この社会はこのままでは続かないわけですよ。化石燃料も、廃棄物も、レアメタルも、いろんな物事がピークを過ぎている時期。日本においては人口縮小していくけど海外は人口が増えていく。限られた資源と限られた空間で僕たちがどう幸せに生きていけるかということは、今までの常識をぜんぶとっぱらって考えないといけないと思っていて。例えば住まいにまつわることもそうだし、政治のしくみもそうだし、ファッションもそうかもしれない。1/20の資源量で今と同じハピネス、もしくは今の課題を解決していかなくちゃいけない。暮らしって、ひとりひとりが変われば必ず社会全体が変わっていくものなので、こうやって考える機会があるというのは、とても意味のあることなんじゃないかなと。

石畠

僕は、今回出展された工務店さんや設計士さんたちが、これから実業の場で、小屋のもたらす未来を広めていってもらって、地域の中のビジネスとして成立するきっかけになったらいいなと。そうすると、この動きがもっと広がるんじゃないかなと思っています。

菜央さん

“小屋”をひとつのきっかけとして、どんな生きかたをしていくか、どんな暮らしかたをしていくか、みんなで交換したりつながったり、刺激しあったり、実験したりしながら、深めていきたいですね。

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自分好みに暮らす、ひとつの“鍵”である“小屋”。
みなさんも、いろんな制約をとっぱらって、どんな暮らしがしたいかを考えてみることから、始めてみませんか?

text 増村江利子
photo  砺波周平

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