敷地は豪雪地、新潟県南魚沼郡湯沢町。
この地を初めて訪れた2015年1月、きれいに融雪がなされ乾燥した道路に面する4mを超す雪山を指差し、ここが敷地であると案内をうけた。
一年の半分は雪に覆われてしまうこの土地において、
夫婦と子供2人、計4人の家族が暮らす、
家の中から樹々や星空を楽しむことが出来る開放的な生活が希望された。
敷地周辺の住宅の建ち方に習い高床式住居とし、生活スペースを地上から上空に持ち上げた。クライアント夫妻の希望するライフスタイルや屋外との関係の作り方といった、
これから作っていく新たな生活環境に関する対話の結果、3Fにエントランスとみんなの居場所、2Fに各自3畳程の小さなプライベートスペースを配置することとなった。
地上階にせっかく生まれた高床下空間を、コンクリートで囲まれた光の届かない埃や排気ガスにまみれたガレージ空間としてしまうことに違和感を感じ、
そこを大きく開放し、家族の拠り所、更にはご近所の拠り所として計画していくことを提案。
地域慣例に基づく「特別豪雪地帯における高床式住宅の特例」を最大限運用し、壁式RC造の高基礎の上に、RCスラブではなく木格子による床板をつくり、
その上に木造2F建ての住宅を載せた。
木格子にはレシプロカル(相持梁)構造を採用する事で、使用する構造材の本数を抑えながら、
梁背300mmの一般的な梁材による5.4mの大間口や1.5mのダイナミックな張出しを可能としている。
それにより生まれた公園の東屋のような軽やかな木組み架構の高床下空間は、高度に安全性が計画され、最大限に法規が運用された
新しい「拠り所」とその「作り方」として、法規や慣習に対するある種の批評性をもちながら、特別豪雪地に対する新たな提案となることを目指した。
冬の厳しい北西風や縦横無尽に吹き荒れる吹雪、更には夏の日射から生活を守り、定常な空気そして定常な明るさを獲得するために、
室内をコンパクトにし外周部には3Fのエントランスまで続く長い回り階段や複数のテラスを配置し、大きく長い風除室、サンルームとして機能するバッファゾーンを計画。
それにより生まれる「屋外のような室内のような曖昧な領域」はその時々の気候や状況に応じた調整装置となり生活に柔軟なゆとりと開放感をもたらしてくれている。
冷暖房は小屋裏空間に設置したルームエアコン1台でまかなう計画。
エアコンにより作られた冷暖気を中間ダクトファンにより強制的に各階壁の中に送り、輻射熱冷暖房とした。
直接風により室内空気を冷やしたり暖めたりするのではなく、建物を冷やしたり暖めたりすることで生まれる輻射熱により身体に直接働きかける。
空気を過剰に暖めず、そして過剰に冷やさずに、快適な室内ではなく、「快適な身体」をつくることを目指した。
高床、風除室、サンルームといったこの土地に古くからある家作りのボキャブラリーを深く読み解き、新たな意味を加え、編集を重ねていくことで、
「この土地の暮らし方や風景に働きかける建築」が、
この土地の「型に習い」、そして「型を破り」明快に実現出来ているように思う。
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